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「自由意思」退け厳格判断


「自由意思」退け厳格判断 念書などの有効性が否定された主な例
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の高額献金を巡り、最高裁は11日、教団側が信者との間に交わした「返金や賠償を求めない」とする念書の有効性を否定した。教団が盾としてきた「自由意思」との主張を退け、献金問題の根幹に対する厳しい司法判断といえる。宗教法人法に基づく解散命令請求の裁判に影響するとの見方もある。

広がり

 「諦めている被害者への大きな励ましになったと思う」。原告側代理人の山口広弁護士は記者会見で判決を評価した。
 昨年11月に東京高裁が同様の書面について公序良俗に反し無効と判断するなど、これまでにも念書や合意書の効果が否定されたケースはあった。だが、逆に書面の存在を理由に門前払いされることもあり、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、返還請求が進まない一因とみている。
 今回の判決は、元信者の女性が高齢で約半年後に認知症と診断されたことや、それまで多数回の儀式に参加して教団の心理的な影響下にあったことなどの事情を考慮した「事例判断」。念書や合意書の有効性が軒並み否定されたわけではない。

世論

 本来、献金は「無償の財産移転行為」(最高裁判決)とされ、教団側も自由意思で行われていると繰り返してきた。教団関係者は「神様に対してささげたお金が(返金ありきの)ひも付きだというのはおかしい」と裁判自体を疑問視する。
 ただ、2年前の安倍晋三元首相銃撃事件で潮目は変わった。「不安をあおる勧誘があった」「借金をして家庭が崩壊した」。こういった声が次々に上がり、不当寄付勧誘防止法が制定された。
 6月の弁論で教団側は、世論や政治的な動きの影響が疑われるとし、最高裁に中立公正な判断を求めたが、全国弁連の阿部克臣弁護士は「司法は国民の価値観を意識せざるを得ない。この2年で教団に対する国民の理解も深まっており、それが判決にも影響したのだろう」と分析した。

追い風

 今後の焦点は、文部科学省が昨年申し立て、非公開で審理が続く解散命令請求の裁判の行方だ。教団関係者は「今回の判決は政治的なインパクトがそれなりにあることは否定できないが、法的には直結しない」とし、強気な姿勢を崩さない。
 ただ最高裁は今回、献金勧誘が違法になる際の判断基準を示した上で、元信者の女性の献金を「異例」とまで表現し、違法性を示唆した。
 教団にとって、今回の最高裁判決は過料決定に続く失点となった。解散命令請求の裁判では、献金集めが組織的で悪質な不法行為だと判断されるかどうかが重要になる。文科省幹部は信者の寄付行為が自由意思に基づくかどうかとの争点は共通するとして「直接の関係がなくても、追い風なのは確かだ」と期待を寄せた。