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設置先、権限、白紙のまま 専門家「まずはスタート」 政策活動費監査の第三者機関


設置先、権限、白紙のまま 専門家「まずはスタート」 政策活動費監査の第三者機関 改正政治資金規正法に基づく「第三者機関」のイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 改正政治資金規正法の付則に設置が明記された「第三者機関」。使途を明らかにする必要がない政策活動費の使い道をチェックする役割が期待されているが、どこに設置し、どんな権限を与えるのかは、白紙のままだ。国会に置けば独立性が損なわれ、内閣に設置すれば政治活動の自由が制限される―。専門家からは、どんな形でもまずはスタートさせ、走りながら改良を加えていくべきだとの意見も聞かれた。
 「早急に具体化の協議を進める」。岸田文雄首相は6月21日の記者会見で、第三者機関の設置時期について、こう強調した。連立を組む公明党も「法律の大部分が施行される2026年1月1日までに具体的な制度設計を検討する」(石井啓一幹事長)としており、年内をめどに、まずは党の見解をまとめる意向だ。
 ただ現時点で第三者機関の具体的な役割や権限、設置先は未定のままで、専門家や議員の間でも意見は割れている。
 登録政治資金監査人を務める東京都内の弁護士は、現行の監査には多くの欠陥があると認めつつも、新たに設置される見通しの第三者機関について「監査対象を広く認めれば、有権者の投票行動に影響を与えかねず、適切ではない」と指摘する。
 改正議論の実務を担った立憲民主党の落合貴之衆院議員も、ブラックボックスとの批判がある政策活動費は使途を全面公開すべきだとする一方「第三者機関を行政府に置いて権限を強くし過ぎると、政治活動の自由を制限することになる」と懸念を示した。
 「内閣に属しつつも内閣から独立して権限を行使できる、人事院のような立ち位置が理想だ」と語るのは、参院政治改革特別委員会で参考人質疑に立った飯尾潤・政策研究大学院大教授だ。立ち入り検査や是正勧告などの権限を持たせるべきだと提案する。
 スタッフは公認会計士や税理士、民間企業の経理担当出身者が望ましいと指摘。政党や、700人を超える国会議員の収支をチェックするには、数十人から100人前後が必要だとし、政治資金収支報告書のデジタル化も欠かせないと話した。
 一方、26年1月に間に合わせるには、まずは動き出すことが重要だと訴える。小さい機関をつくり、制度改正を重ねながら大きくしていくのも手だと語った。
 NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「国会につくれば、十分に情報が公開されなくなる恐れがある」と警戒する。政治団体をまたぐ不透明な資金移動も監査の対象にすべきだとした上で、こう力を込めた。「有権者が各議員を評価できるだけの情報を提供できるかどうかが最も重要だ」

 政策活動費 政党から政治家個人に支給される政治資金。党側の政治資金収支報告書には支出として記載されるが、政治団体ではなく個人に支給されるため、使途を明らかにする必要がない。岸田文雄首相は正当な政治活動に充てられていると主張したが、野党などは「ブラックボックスになっている」と批判。自民党の二階俊博元幹事長が在任中の5年間に計約50億円を受領したことなどが国会で問題となり、今回の政治資金規正法改正につながった。政策活動費に関する領収書の10年後公開や支出上限額の設定が付則に盛り込まれた。