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保護者対応 負担大きく 外部活用の仕組み必要 教員「高ストレス」最多


保護者対応 負担大きく 外部活用の仕組み必要 教員「高ストレス」最多 奈良県天理市教委の保護者対応の取り組み
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 教員のストレス要因の一つとされる保護者対応。理不尽な要求への対処で授業準備など本来業務に支障が生じる恐れもあり、学校任せにしない取り組みが各地で広がる。現場の負担軽減策として期待される一方で、専門家は外部に委ねるだけでは根本的な解決にならないと指摘する。
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 「子どものノートがなくなった。隠されたんじゃないか」。西日本の教育委員会に昨年度、公立小に通う児童の保護者が怒鳴り込んできた。担任らは自宅に呼び出され謝罪。学校はクラス全員にノートを捜させ、全校保護者にメールを送るなどしたが、見つからなかった。
 関係者は「紛失はよくあるが、原因が不注意なのかトラブルなのか判断は難しい。保護者が納得するまで対応するので徒労感しか残らない」と吐露する。
 文部科学省の2022年度の勤務実態調査では、保護者対応が負担だと回答した小中学校の教員は、成績処理や事務作業に次いで多かった。別の調査では、精神疾患を理由に休職した教員が過去最多に。文科省は保護者対応が一因と分析し、24年度予算に1億円を計上して各教委による教員の負担軽減の取り組みを後押ししている。
 奈良県天理市教委は今年4月、家庭からの相談に一元的に対応する「子育て応援・相談センター」を開設。元校長4人や臨床心理士らが常駐し、ケースによって相談機関や弁護士、学校につなぐ。山口忠幸教育次長は「教員には子どもに向き合う本来業務に集中してほしい」と語る。
 元校長を中心とした「学校サポートチーム」を立ち上げたのは、高知県香美市教委だ。保護者対応などに関する学校からの相談を受けるだけでなく、元校長が学校を巡回。担当者は「先手先手で学校が抱えている困り事を共有できるようにしたい」と話す。三重県教委は6月、保護者と教員双方を対象にした相談窓口を設置した。
 帝京大の佐藤晴雄教授(教育経営学)は「対応が長期化して教員が疲弊するケースは多く、第三者が介入する仕組みは負担軽減につながる」と評価。その上で「保護者対応を丸投げするような運用では問題はこじれる。学校が多様な専門家の知見をうまく活用できるような仕組みを構築していくべきだ」と指摘した。