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民主主義の危機顕在化


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米共和党のトランプ前大統領が13日、東部ペンシルベニア州で選挙演説中に銃撃された。政敵を徹底攻撃するトランプ氏の登場によって米社会の分断は深まった。異論封殺のためなら暴力を容認するような風潮も高まっており、民主主義を揺るがす暴力の危険性が顕在化した。
 トランプ氏は大統領選の共和党予備選を勝ち抜き、15日開幕の共和党大会で正式指名を待つばかりだった。銃弾がわずかにでもずれていれば尊い命が失われるだけでなく、1票を投じた有権者の意思までも損なわれる危機に陥りかねなかった。トランプ氏の選挙集会では厳重に出席者の手荷物検査をするが、今回は会場から離れた場所からの銃撃で、警備上の課題も露呈した。米国内に数億丁出回る銃の規制を進めない限り、再発の完全な防止は不可能だ。
 安倍晋三元首相も2022年に演説中に凶弾に倒れた。いかなる動機であっても言論を封殺する暴力は許されない。民主主義の機能を停止させないよう防止に手を尽くすべきだ。(ミルウォーキー共同=高木良平)