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「不屈」演出、偶像化も 若手起用で挙党態勢加速  トランプ氏指名


「不屈」演出、偶像化も 若手起用で挙党態勢加速  トランプ氏指名 13日、米ペンシルベニア州バトラーで、銃撃を受けた後、拳を突き上げるトランプ前大統領(中央)(AP=共同)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米共和党大会が開幕し、トランプ前米大統領(78)が大統領選候補に正式指名された。暗殺未遂事件から2日後にもかかわらず「不屈」の姿勢を演出し、党内では理想の指導者として偶像化が進む。政権奪還へ向けた伴走者となる副大統領候補にはバンス上院議員(39)を選び、若手起用で挙党態勢づくりを加速させた。高齢不安が再燃する民主党のバイデン大統領(81)は、トランプ陣営の勢いに圧倒されつつある。
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化身

 15日夜、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーでの党大会。負傷した右耳をガーゼで覆ったトランプ氏が姿を現すと、会場には「ファイト(戦え)」コールが響いた。13日に銃撃されたトランプ氏が、直後に叫んだのと同じかけ声だった。
 星条旗を背にしたトランプ氏が、耳から血を流しながら拳を突き上げる写真は「抵抗の化身」(米紙)として国民の目に焼き付いた。15日には南部フロリダ州の連邦地裁が、トランプ氏が私邸に機密文書を持ち出したとされる事件で、担当検事の任命に問題があったとして起訴を棄却。追い風続きのトランプ氏は党大会の会場で、負傷した耳を指さしながら余裕の笑顔を見せた。

クローン

 党大会初日の15日、トランプ氏と同様に注目を集めたのが副大統領候補選びだった。
 最終選考に残った複数の候補のうち、バンス氏は群を抜いて若く、政治経験も乏しい。かつてはトランプ氏を「米国のヒトラー」と批判したこともあったが、その後変節し謝罪。トランプ氏の推薦を受け上院議員となった。今や、トランプ氏を熱烈に支持する「過激な人物」(民主党関係者)だ。
 バイデン氏は15日、バンス氏について「トランプ氏のクローンだ。何ら違いはない」と批判のトーンを上げた。

逆転

 バイデン氏が盤石の態勢で民主党の候補選びを勝ち抜いたのに対し、その間、足並みが乱れていたのは共和党の方だった。
 ヘイリー元国連大使が健闘し、共和党内の反トランプ票を集めていた。だがトランプ氏は地力の強さを見せ、ヘイリー氏は3月6日に撤退に追い込まれた。
 トランプ氏は6月27日の討論会では、体調不良だったバイデン氏を圧倒。バイデン氏は以降、求心力を急速に失い、民主党内では撤退論と混乱が拡大し、両党の状況は完全に逆転した。凶弾にさらされながらも間一髪で命拾いして勢いに乗るトランプ氏に対し、民主党は有効な対抗策を見いだせていない。
 バイデン氏は、2021年の議会襲撃事件で起訴されたトランプ氏を「民主主義への脅威」だと強く批判してきたが、共和党は、そうした発言が暴力行為を誘発したと逆襲。バイデン陣営は攻撃的な選挙宣伝の一時中止を余儀なくされた。
 民主党内の動揺は収まらない。
 暗殺未遂を受け「次は外さないように射撃訓練を受けてくれ」とソーシャルメディアに投稿した側近を、トンプソン下院議員は即刻、解雇する事態となった。
 南部サウスカロライナ州から共和党大会に訪れたキャシー・ファリッシュさん(59)は「(民主党陣営の)言動は憎悪に満ち、いつか事件が起こるのではないかと思っていた」と述べ、怒りの矛先を民主党に向けた。(ミルウォーキー共同)