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絶滅危惧種へ影響懸念 救急搬送期待も効果不透明 北大東レーダー計画


絶滅危惧種へ影響懸念 救急搬送期待も効果不透明 北大東レーダー計画 移動式警戒管制レーダーの基地予定地に自生している、絶滅危惧種のダイトウワダン=2023年7月、北大東島
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 北大東村への航空自衛隊移動式警戒管制レーダー配備計画で、基地整備予定地周辺には、絶滅危惧種の植物や希少な動物が生息している。防衛省は動植物を必要に応じて移動・移植すると説明しているが、識者は疑問を呈する。一方、住民からは緊急患者搬送の迅速化を期待する声が上がるが、配備されるレーダー部隊は急患搬送に直接の関係がない。住民の期待と実態がかけ離れている可能性がある。 (1面に関連)
 北大東村は2023年、村自然環境保護条例の一部を改正。保護対象に絶滅危惧種のダイトウワダンなど新たに植物14種加えた。レーダーや隊舎整備が予定される島北東部には、ダイトウワダンに加え、同じく絶滅危惧種で国内では南北大東島だけに自生するボロジノニシキソウもある。
 植物を専門とする琉球大名誉教授の横田昌嗣氏は「南北大東島にしかない種類が数多くあり、しっかり保全しないと絶滅する可能性が高い。研究が進んだら新種になる種類も複数ある」と説明する。移植して保護するという防衛省の方針には「台風の影響を強く受ける海岸の岩場に生えるような植物の移植は非常に困難だと考える」と指摘した。
 島北東部はヤシガニやヤドカリの産卵場所になるなど、希少な生き物も生息している。大東島振興機構の葉棚清朗事務局長は「島内でも人の手が入りきっていない、地域資源として、重要なエリアだ」と話す。「基地建設によって現状生息している生物にどのような影響があるのか、説明されないといけない」と語った。
 21年に村議会が可決した自衛隊誘致に向けた意見書は、台風などの災害対応に加え、急患搬送の時間短縮への期待を盛り込んでいた。だが、県内の患者空輸は主に陸上自衛隊が担っている。窓口も陸自が務めており、急患搬送を依頼する役割の県によると、空自と直接、やりとりすることはない。急患搬送の円滑化を狙ったが、効果は不透明だ。
 (明真南斗、田中芳、岩崎みどり)