あす27日、衆議院議員選挙が行われる。候補者には、沖縄人もいればそうでない人もいる。有権者には組織や仕事でのしがらみにとらわれず、自らの良心に照らして、沖縄人の名誉と尊厳を尊重し、沖縄の発展に貢献する人に1票を投じてほしい。沖縄人でなくても、沖縄のためになる政治家はいるし、沖縄人でも沖縄の利益に反する行動を取る人がいる。所属政党や日本の政争と関係なく、沖縄の利害得失を第一義に考え、沖縄と沖縄人の代表を日本の国政に送り出すことが重要と思う。
筆者は、東京に住民票がある。既に新宿区役所で期日前投票を済ませた。所与の条件下で沖縄のためになると考える候補者(小選挙区)と政党(比例区)に1票ずつを投じた。
石破茂首相は、首相に就任する前に繰り返し、日米地位協定改定の意向を示した。この意向を実現する方向で、沖縄が戦略を練る必要がある。今まで、使っていなかった手段、具体的には、県と県議会への請願が効果的と思う。請願は憲法にも規定されている国民の権利だ。憲法第16条では<何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない>と規定されている。
さらに請願法第3条では<請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない>とされている。日米地位協定になると所管する官公署は、外務省になるが、「日米地位協定改定を求める意見書を沖縄県/沖縄県議会から国に提出すること」とすれば、県/県議会への請願として十分成立しうる。
特に重要になるのが県議会への請願だ。<請願(陳情)の審議結果の区分について/(1)採択(内容に賛同すること)/(2)不採択(内容に賛同しないこと)/(3)継続審議(慎重な審議が必要なことから、次の定例会まで審議を持ちこすこと)/(4)審議未了(審議を終了し、採択・不採択の決定をせず、また継続審議にもしないこと)/なお、採択は知事等に対して拘束力があるものではなく、願意・要望の実行が保障されるものではありません>(沖縄県議会HP)。
万単位の県民の署名を伴う請願を県と県議会に行う。県議会が請願を採択した上で、日米地位協定改定を求める意見書を作成する。県もそれと平仄(ひょうそく)を合わせた意見書を作成する。県と県議会の意見書を玉城デニー知事と中川京貴議長が石破首相に手渡すのだ。
日本政府は日米地位協定改定に関して、極めて消極的だ。日本のマスメディアも一般国民も本件についてほとんど関心がない。だから、沖縄からの働きかけが死活的に重要になる。
衆議院議員選挙後、中央での政局がかなり動き出す可能性がある。この流動化を日米地位協定改定に向けて、戦術的に巧みに用いる知恵を沖縄から出していかなくてはならない。日米地位協定改定に取り組む過程で、沖縄の自己決定権が着実に強化されると筆者は考えている。
(作家、元外務省主任分析官)