【チャイナ網路】赤い服の呪い


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 昨年末、ビルの12階から全身深紅を身にまとったモデルが、飛び降り自殺をした。中国人なら、その恨みが尋常ではなかったことがすぐ分かる。“赤”が、この世に立ち戻り、必ず恨みを晴らすという固い決意の象徴だからだ。
 “赤”は、古来強いエネルギーを持ち、邪を払う色として、珍重されてきた。世に化けて出た怨霊(おんりょう)は、近づくことさえできないとされているが、身に付けて死ねば怖くはなくなる。そう信じられているのだ。
 伝説の起源は、周公に恨みを抱いた桃花女が、赤い服に身を包み、桃の枝を手に死んだという話が有名だ。明末期、安徽省で行われた「鳳陽法術」の術という説もある。が、道教の教えによると、地縛霊となるこの方法では、相手を呪(のろ)い殺すための「黒旗令」を地獄に取りに行くことさえかなわない。
 一説によれば、魂魄(こんぱく)が一体となった生きている状態の人間のパワーの方が、死霊より強いとか。恨みを晴らすなら、生きている方が可能性は高いと、宗教関係者も指摘する。が、同様の自殺は毎年約10件。伝説の力は、依然強いようだ。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)