【交差点】風に吹かれて


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 新店舗の入居先として候補にしているハーバーフロントセンターを視察した。その名の通り、スタークルーズでインドネシアのバタム島やマレーシアのペナン島、世界中へ行く高級クルージングの港である。
 シンガポールに来たばかりのころはよく訪れていた場所だ。久しぶりの場所で2006年度も一生懸命頑張りたいと決意した。港で風に吹かれていると、自然と感情的になってしまう。沖縄にいるときも海外の夢を思い浮かべて砂辺の防波堤で海を見ながら、オリオンビール片手に「やってやるぞ」と自分自身を奮い立たせていた。
 沖縄を出て初めて訪れた香港でも、ハーバーフロントで寂しさや不安から沖縄に帰りたいと思う弱い自分と戦った。ベトナムでもサイゴン港から眺める景色を見ながら、将来について自問自答している自分がいた。海を見詰め、風に吹かれると、かなたにある目的地で目標を成し遂げてやるぞ、という本能的な気持ちになるから不思議だ。
 昔は独り身で若かったから、どこまでも行ってみたいと日々考えたが、最近はゆっくり港に行く時間もなくなってきた。結婚し、会社を興した今、一人だけの体でなく、自由もそれなりに制限されている。
 とは言い訳。いかなる状態でも夢を忘れてはいけない。気持ち次第だ。家族での冒険、事業の世界展開、息子が成長するまでには実現したい。今度は家族みんなで風に吹かれたい。
 (遠山光一郎・シンガポール現地法人社長)