【チャイナ網路】公設市場の“ブランド”


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 昔ながらの市場が、スーパーや大型量販店に客足を奪われる中、依然確固たる地位を保ち続けている市場がある。台北市公設市場界の雄「南門市場」だ。オフィスビルの地下1階から2階に入居する店舗は、271。旧正月前の5日間で、今年も10億円を売り上げた。
 官庁街に近い市場は、昨年で満100歳。外省人向けの各地の美味が自慢だ。湖州粽(ちまき)の「南園」、上海鬆糕の「合興」など、名店と呼ばれる店は少なくない。特に15を数える江南食材の店は、故宋美齢夫人や蒋経国総統もお気に入り。黒塗りの車が門前に列を成すこともあったという。
 新光三越の呉東興会長も、熱狂的ファンの1人だ。一昨年の新店舗展開の際は、総菜店「億長御坊」の支店出店を幹部に厳命。なかなか首を縦に振らぬ店主に、重役連が連日頭を下げ続けたという逸話もある。
 天井から下がる金華ハムの林に、蒸したての饅頭(マントウ)の香りが漂う。心躍るむせかえるほどの色と香り。正直「どれも安い」とは言い難いが、大切な客のためには足を運びたい。そんな公設市場界に輝く、信頼のブランドなのだ。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)