【チャイナ網路】わんこの七光


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 今年の「新年のあいさつ」で、TV画面いっぱいに跳ね回り、主役の総統をすっかり食っていたのは、総統の愛犬“勇哥”だ。少々ダサい名前を付けられた上、総統には「覚えが悪い」と愚痴られてもいるが、血筋も正しい台湾犬だ。
 台湾犬は、琉球犬のルーツともされる犬。敏しょうで賢く、かつては先住民の猟犬として活躍したが、長い歴史の中で雑種化が進み、絶滅さえ疑われた。幸い戦後、日本の調査団により純血犬46匹が確認され、今では専門のブリーダーもいる高級犬。一時は1匹数十万円で売買された。
 総統が台湾犬を飼い始めてから、せめて飼い犬だけでも“親せき”になりたい政治家が、次々と台湾犬を飼い始めた。業者は「同じ血筋の犬を」という注文に頭を抱えたという。
 一方、馬英九台北市長の愛犬は、保健所から引き取られてきた雑種犬。「犬は福を連れてくる」と中国人は言うが、飼い主の人柄もうかがえる。純血犬を飼う総統は“原理主義的”、街にあふれる元野良犬をかわいがる市長は現実肯定派だ。好印象勝負では、市長に軍配が上がりそうだ。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)