【チャイナ網路】静かな“国際語”


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 ある集会に集まった日本と台湾のろう者が、わずか1時間で楽しく“会話”できるようになった、という記事を見て驚いた。実は、台湾の手話は日本系。ろうあ教育の始まった日本植民地時代の影響を、今も色濃く残しているのだ。
 手話は、口語をジェスチャーに置き換えただけのものだと思われがちだが、実は独自の文法体系を持つ、れっきとした“言語”。世界には、英系、仏系など数系統あり、口語とはほぼ無関係に存在する。英と米では系統が異なるため、手話は通じないのだという。
 一方、系統が同じであれば、口語が異なっても通じやすい。台湾には戦後、中国の手話も入り、今では異なる部分も少なくないが、いまだ6割の語彙(ごい)が通じる。「発音が難しい」と悩む必要がない分、コミュニケーションツールとしては、なかなかの優れものだ。
 手話は、ろう者のものばかりでもない。方言格差の大きい中国では、商談に手話を使っていた時代がある。手話は2歳以下の幼児の言語発達に、顕著な効果があるという米の研究報告もある。子どもの教育に熱心な中国。手話教室が今、大人気だ。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)