【チャイナ網路】象設計集団と台湾


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 宜蘭県庁舎は台湾の公共建築の中でも異色の存在だ。レンガと緑の台湾風“秘密基地”にも見えるビルの中は過ぎし日の風景。美しい瓦タイルの道が農家と思しきオフィスを縫うように走り、各所に配された中庭に陽光が降り注ぐ。この不思議な空間の設計者こそ、象設計集団だ。
 名護市庁舎などで、沖縄ではおなじみの同社。台湾とのかかわりも深い。1991年には、宜蘭の冬山河親水公園で文化功労賞・ガマラン賞を受賞。台湾大地震の復興事業など台湾各地で活躍している。
 もっとも、県議会で庁舎が「日本かぶれ」とたたかれたこともあった。議会棟は「風水的に問題」「使い難い」と、改修を余儀なくされている。が、彼らの風土や文化に深く配慮する姿勢に揺るぎはなく、依然台湾の建築界に多大な影響を与え続けている。
 外国の高級建材と無国籍でインターナショナルなデザインが“高級”の代名詞だった台湾の建築。「都市の景観は、その地の文化と英知の結晶であるべきだ」と、宜蘭が目指した「景観革命」に、彼らはユニークな答えを出している。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)