【チャイナ網路】ロングステイの落とし穴


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 日本人ロングステイの第1号として、先月鳴り物入りで台湾に移住した日本人夫婦が先日、大騒動の末、退去した。理由は「犬のふんとバイクが多く、環境が悪い」こと。わずかの間に一変した夫婦の態度に、住民からは怒りの声が上がった。
 山紫水明。スーパー、医療施設等完備とうたう資料を信じ、わずかな下見で移住を決意した夫婦。当初から「食器洗い機が欲しい」等々、不満も少なくなかった。元教師はなぜ「人間の住むところではない」とまで言い捨てたのか?
 連日メディアに煩わされ、住民の激しい反応に動揺したとは思う。細かいトラブルもあったのだろう。言葉を解さぬ外国人に、誤解はつきものだ。が、想定した生活にこだわり続ける姿勢に、非がないとは言い難い。意外に同情的だった報道も、何の慰めにもならなかっただろう。
 夫妻の言い分に、事前調査の甘さが垣間見える。短期であれ“住む”からには、それなりの礼儀がある。「郷に入っては」と言うはやすいが、きれい事では片付かない異文化への尊重と理解。想像以上の覚悟が必要であることを、肝に銘じたい。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)