【交差点】働く女性


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 「奥さんも店をお手伝いなされているのですか」。日本人の知人によく聞かれていつも不思議に思うことである。もちろん、何の意味もなく、あいさつのような問いかけだと思うが、背景には「妻はだんなを手伝い、自分のキャリアがないのが普通」という考えがあるのだと思う。妻には店舗にはあまり出入りしないでくれと伝えてある。ビジネスとして考えれば、公私混同しないのは当然のことだと思う。妻の自慢になるのか、夫として恥の公表になるのか分からないが、シンガポール大学で勉強を共にした妻のアメリアはシンガポール情報開発庁の財務マネジャーで部下を数人もち、独立前の銀行勤めの時も、今でも私より高給取りである。お互いに違う経験を積んでおり、彼女から教えてもらうことも多い。私は彼女を1人の社会人として尊敬している。日本でも働く女性は増えていると思うが、基本的にはパートがメーンで男性が収入を支えており、真の意味でのキャリアウーマンは少数派で、しかも異端的な目で見られる土壌があるのではないだろうか。シンガポールに限らずアジアでは女性も男性と同様に知識を持ち、キャリアを積み上げていくのが普通である。常識が違うので仕方ないのだが「奥さんも店舗を手伝っているのですよね」と当然のように聞かれる時は正直、不思議に思うより、ムッとする。力み過ぎかもしれないが「彼女には彼女自身のキャリアや知識があり、彼女自身の人生があるのです。簡単に考えないでください」と言いたくなる。
(遠山光一郎・シンガポール現地法人社長)