【交差点】国際人の条件


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「国際的に活躍できる人材を育てるために英語教育に力を入れています」という教育関係者の話を聞くたびに少し心配になる。「英語ができるのですか、国際人ですね」。私もよく言われることである。しかし、英語ができるだけで国際人というのはどうだろう。一般的に日本で英語がうまいといわれる人でも英語圏の人と比較して英語力は13歳以下ぐらいのレベルだろう。ということは英語だけができてもアメリカ人やイギリス人の13歳ぐらいの人と話をしているのと大して変わらないことになる。それだけでは何の魅力もなく国際人とは言い難い。国際コミュニケーションでは人柄、専門知識、自国の文化を理解しているかが一番重要なポイントになり、そういうものを持っている人が多文化で価値観の異なる国際社会で活動できる国際人と私は考えている。最近は競うように低学年から英語を教えているが、もっと大事な事は道徳教育を通して人柄の構築、知識吸収の道具となる日本語の徹底がより重要なことだと思う。そういう基礎ができている人は、語学学習も効率的に行えるし、いろいろな人が好んで話してくれるので、英語などその気になれば数年で習得することは難しくない。アメリカアクセントを多用した中身のない会話を聞く度にそう思う。英語が下手でも、いかに自国語なまりだろうとも恐れることはない。一番大切なのは、アメリカ人のように話すのではなく、中身なのである。下手な英語でも話す人の人柄や知識により、魅力ある会話が成り立ち、国際人として尊敬の対象となるのではないだろうか。
(遠山光一郎・シンガポール現地法人社長)