【チャイナ網路】「ひとつの中国」という踏み絵


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 台湾の最大野党・国民党の連戦名誉主席は16日、中国の胡錦濤国家主席と1年ぶりに会談した。今回の訪問中、中国側は台湾農産物の無関税輸入品目拡大など、15項目にわたる優遇政策を発表。行き詰まる中台関係の突破口として、その成果に期待する声は高い。
 しかし、優遇政策は一見目新しいように見えて、それほど実益を伴わない。台湾農産物も高値から、昨年の人気もどこへやら。「台湾人医師の医療活動を許可」ともあるが、現在でも“外国人医師”として働く台湾人医師は少なくない。
 むしろ期待が高まるのは、16日に発表された台湾観光の解禁だ。翌日、北京、上海などの大都市では、1000人を超す申し込み客が殺到。台湾ではさっそく観光バスの購入を決める業者も出ている。
 が、受け入れ実現には、政府間交渉が欠かせない。中国の「ひとつの中国」という踏み絵を、台湾がけ飛ばせば、景気回復も絵に描いたモチだ。失望感の高まりは、2年後の政権交代をも招きかねない。パンダ受け入れとは格段に違う深刻な事態。民進党政府は「踏み絵」と票の間で揺れ動いている。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)