【交差点】新時代到来を告げるもの


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 変革を渇望する米国民の期待を背負い大統領選に当選したオバマ。史上初の黒人大統領の誕生に米国中が勝利感に沸いた日から時間が経過し、米メディアは「期待が大きい分、失敗すれば大きな失望感を伴うだろう」と現状の厳しさを指摘し始めた。

 「金融危機はブッシュ政権の失政の結果」と切り捨てることができた選挙期間中と違い、就任後はすべての責任を負う立場になるオバマが手本にしているといわれているのがルーズベルト大統領のニューディール政策。大恐慌以来と評される厳しい局面の中、オバマは「米経済の回復には積極的な財政支出が不可欠だ」という強気な姿勢を崩さない。
 公的資金の投入をめぐり、物議を醸しているビッグスリー救済策でも、オバマは「自動車産業は米製造業の柱。政府が救済しなければ悪影響は全体に及ぶ」と自身の見解を明示した。特定業種だけを救済するのは不公平だという声もあるものの、金融機関の救済策をめぐって米国中が2つに割れた時、「金融機関は米経済の大動脈だから公的救済は当然」と早い段階から支持に回ったオバマの判断力を信じる国民も多い。
 失敗の許されない国政運営を強いられるからこそ、強く求められるのは、思想や政策の差異を融和しながら国を正しい方向へと導くリーダーシップ。失業者があふれ、暗いニュースが続く毎日だが、米国民は「私たちは正しいリーダーを選んだのだ」という自信に満ち、目には希望の光を宿している。暗闇にともされた無数の希望の光。それは米国に新しい時代の到来を告げるものではないだろうか。(平安名純代ロサンゼルス通信員)