【交差点】ロミオとジュリエット


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 長男のKOAの保育園で学芸発表会があるという。息子に「役は何?」と聞いてもはっきりした返事は返ってこない。「台詞(せりふ)は?」と聞いても台詞はないという。どうやら木や花などの背景要員に起用されてしまったかと、自分の息子を見くびりながら学芸会に参加した。

だが、参加してびっくり、劇はシェークスピアのロミオとジュリエットで息子の役はロミオ役、「倒れたジュリエットの手を取り…」等のナレーションを他の園児らが朗読し、その朗読に合わせて動いている。当然ながら非常に簡単な演技ではあったが、まさか自分の息子が、あのロミオを演じるとは夢にも思わなかった。
 保育園でシェークスピアを教育システムに取り入れているとは恐れ入ったし、素晴らしいと思ったのは、劇を指導するのは通常の保育園の先生でなく、ちゃんと演劇の学位を持つ専門機関の若い学芸指導員に外部委託していることで、英語の発音も完璧(かんぺき)で本格的である。最近、息子の語学力は急速に進歩しており、息子に「パパの英語の発音はおかしいし、文法も間違っている」と指導され始めたのにも、これなら納得である。
 英語教育において、文法とかも大切だが、語学の基本的な部分である文化などを題材に語学以外の興味を生み出して英語圏社会やその伝統や歴史まで興味を持たすような試みは非常に大切だと感じた。日本でも若いうちからシェークスピア等を活用した教育方法を大いに取り入れるべきであろう。語学はもとより、背景にある欧米人の歴史観や文化の基本を理解することにより、ボーダーレス社会において異文化の人たちを理解する手掛かりになるのではなかろうか。(遠山光一郎・シンガポール現地法人社長)