【交差点】源氏物語生誕1000年


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 源氏物語の権威・世羅博昭四国大教授がロサンゼルス近郊で活躍する作家・飯沼信子さん宅で源氏物語生誕1000年を記念して物語を分かりやすく解説していた。参加者は11人。飯沼さんの日ごろの親しい友人らが招かれ、世羅教授のユーモアを交えた源氏物語談義に興味深く聞き入った。

 世羅教授によると、源氏物語は基本的にはフィクションであって、実在の人物物語ではない。登場人物約500人、そのうち、主要人物が約50人、4代の天皇、70年にも及ぶ時間のもとで繰り広げられる壮大な物語である。作者紫式部は、中流受領層に属する自らの目で、上流貴族社会の世界を鋭く見つめることを通して、政治の世界における権力争いやその中で翻弄(ほんろう)される女性の生き方、さらには男女の多様な愛の姿を描いている。
 源氏物語の第1部と第2部は、美しい容貌(ようぼう)、素晴らしい才能、また、好色とまじめさを併せ持った男性・光源氏を中心に据えて描かれているが、作者は一夫多妻の結婚制度の中で、「女」はどのような生き方をしたらよいのかということを追求して物語としても読むことができる。
 高校の授業で、世羅教授があまりに男女関係の話をしたので「三角関係の世羅」と生徒にあだ名をつけられたエピソードも披露され、参加者一同腹を抱えて笑った。質疑応答では日本人の文末表現のあいまいさにまで発展、世羅教授は「LAには日本文化に非常に関心を持っている人が多いのに対して、日本では日本文化にあまり関心が高くない。日本文化の良さが外国から逆輸入されている現状に憂慮している」と結論づけた。
 そういえば琉球芸能やウチナーグチにも同様の現象が起こっていないか。
(当銘貞夫ロサンゼルス通信員)