【島人の目】原発ブーム


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 日本が官民挙げて、ベトナムの原子力発電所建設受注にしのぎを削っていることはメディア等でも取り上げられている。世界各地で原発建設が検討されていて、大丈夫なんだろうか? と人ごとに感じていた。

 ところがシンガポールでも原発建設計画の検討が始まり、びっくり仰天。シンガポールは沖縄より小さく人口は500万人の都市国家である。政府の発表に当然いろいろな反響があり、政府は計画を検討しただけで、建設されるか分からないし、ここ2~3年で建設するというものでなく、建設されるとしても10~20年かかると思うとの見解を発表し火消しに動いている。
 ただ、野党がないに等しく、消費税率アップやカジノ建設まで政府の意思決定はスピーディーに進むお国柄だけに心配しないわけにはいかない。妻に原発ができたらシンガポールから出ようと話したら、「だけど原発は世界の主流になるのでしょ。エネルギー安定には必要なのでは」。シンガポール人らしい意見と言ったらそれまでだが、世界で唯一の被爆国民であり、旧ソ連の原発事故や日本国内での事故被害者の現状を知る者と、近隣にも原発がなく被害を知らない者の原発に対する認識の違いに衝撃を受けた。
 シンガポールのような小さな都市国家で大事故が起きたら一体どうなるのか? 被害は国内だけでなく隣国にも影響を及ぼしかねない。シンガポールなら最新鋭の設備や技術者をそろえ、最新最高の事故対策を取ると信じるが、百パーセント事故を防ぐことができるのだろうか? この国が好きで暮らしているが将来、原発のために国を去ることになれば、それは私、家族にとり大変悲しいことである。
(遠山光一郎、シンガポール在住、会社経営)