【島人の目】仲宗根雅則/葬儀外交


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 先日亡くなったローマ法王ヨハネ・パウロ2世の葬儀には、世界中の王室や国家元首など錚々(そうそう)たる顔ぶれがそろった。例えばイギリスは、自らの結婚式まで延期したチャールズ皇太子とブレア首相、アメリカに至っては現職、前、元の3代の大統領とライス国務長官が出席した。
 ところがそこに現れた日本代表は、なんとただの外務副大臣。日本政府は法王の葬儀が外交上の大きなひのき舞台であることを微塵(みじん)も理解していなかった。
 法王の死に際しては、ヨーロッパ中の若者と世界各国の信者が合計400万人もバチカンに集結した。過去2000年、264回にも及ぶローマ法王の葬儀でも初めての出来事である。
 ヨハネ・パウロ2世は敵対してきたユダヤ教徒と和解し、イスラム教徒に対話を呼び掛け、アジア・アフリカなどに足を運んでは貧困にあえぐ人々を支えた。同時に東欧の人々に「勇気を持て」と諭して、ついにはベルリンの壁を崩壊させたとさえいわれる。
 偉大な男の葬儀が外交的に重大な舞台になることをしっかりと認識していたアメリカは、世界中に10―11億人といわれるカトリック教徒の目と、彼を慕うユダヤ教徒、イスラム教徒、またアジア・アフリカなどの人々の心情に応える形で、現職を含む3代の大統領と国務長官をバチカンに送り込む派手なパフォーマンスを演出した。さすがである。
 そんな大舞台に、世界から見ればどこの馬の骨ともしれない程度の外務副大臣を送ってお茶を濁したわが日本は、やはり外交音痴、世間知らずと笑われても仕方のないところである。
 (イタリア在住・TVディレクター)