【チャイナ網路】「労作教育」の効果


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 台湾の東海大学には、1955年の創立当初から非常にユニークな制度がある。「労作教育」というキリストの精神に根差した全人教育システムだ。近年アメリカで注目されている、学習と社会実践をリンクさせた「サービス・ラーニング」の理念にも近い。
 同大では約3000人の新入生全員に1年間、週5日・30分間の学内清掃を義務付けている。時間は、早朝と昼休みを半年ずつ。単位はないが必修科目のため、修了しなければ卒業はできない。成績は奨学金の給付等にも反映されるというから、負担は重い。
 もちろん学生に不満はある。「大学側の体のいい搾取」という声もある。大学側に圧力をかけ、特例的な免除を求めた保護者もいたが、同大は信念を守り続けている。第三者の調査によると、実は7割以上の学生が制度の意義を認めているというから面白い。
 作業には部署ごとに、志願した上級生が付く。後輩をなだめ諭しつつの指導は困難を極めるが、教育効果は、この指導者に顕著だという。近年台湾の大学も大注目。国立台湾大学をはじめ約20校が同じような制度をスタートさせている。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)