【チャイナ網路】「軍訓教官」という存在


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 台湾の大学には現在も約1500人の現役軍人が配置されている。肩書は「軍訓教官」。台湾を訪れる中国人も驚く事実だ。蒋介石時代のファシズムの残滓(ざんし)とも批判され、民進党が廃止を求め続けて十数年。先ごろ、2020年の廃止が決まった。
 1951年に始まったこの制度は、愛国心の発揚等が建前だが、政府の意図は学生による民主化運動の抑圧にあった。尖閣奪還運動、米国との国交断絶、国連脱退と続いた台湾動乱70年代。高まった学生運動にも、その効果が期待された。
 特に当局が手を焼いた台湾大学には“馬祖島のロンメル”ともたたえられた名将・張徳傅が派遣されている。もっとも、氏の対応法は、政府にデモの承認を働き掛けて、ガス抜きを図るというもの。その人柄と英明な判断に共感し、中には退学して従軍する学生もいたという。
 現在の仕事は、男子学生対象の軍事概論程度。女子学生にはほとんど無縁の存在だ。形骸(けいがい)化し大学のお荷物になってしまった「軍訓教官」。将来は選択科目「国防通論」という形で名残を留めることになる。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)