熱演に「対馬丸」遺族ら涙 新作組踊上演「海鳴りの彼方」


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「対馬丸」沈没後も、亡くなった友人らを思い、苦しむ武志(右端)や母のトシ(左端)ら=11日、那覇市泉崎の琉球新報ホール

 太平洋戦争中の学童疎開船「対馬丸」沈没を題材にした新作組踊「海鳴りの彼方~対馬丸の子ら」(大城立裕作、幸喜良秀演出)が11日の昼と夜の2回、那覇市泉崎の琉球新報ホールで上演された。

対馬丸が題材の新作組踊は初。子役や中堅・若手の琉球芸能実演家らが熱演。人間国宝の西江喜春さんらの歌三線による重みのある音楽も響いた。戦争がもたらす悲惨さを組踊の様式を使い深く表現した。遺族らも舞台を鑑賞、涙を流し舞台に見入った。
 公演は対馬丸記念会の関係者や一般協力者、琉球新報社などでつくる新作組踊「対馬丸」実行委員会が主催。対馬丸に乗って生き残り、沖縄へ帰った小学6年生の武志を主人公に、犠牲者や事件後の遺族、生還者の苦しみを描いた。つしま丸児童合唱団(高里千穂子指導)の歌や創作舞踊「てぃんさぐぬ花」(玉城節子作舞・指導)も披露された。
 対馬丸に乗った弟を亡くした80代の女性は「戦争を思い出し、苦しくて最後まで見られなかった。若い人もあの時の本人、家族の苦しみを知るきっかけになればと思う」と話した。親子で来場した金城美佳さん(44)は「子どもたちが好きな本の話をする場面は、戦争が奪ってしまったものを感じた」と涙ぐみ、長女の萌笑さん(南風原小2年)は「かわいそうだった」と戦争の悲惨さを感じ取っていた。