「米法」根拠に警告板 米軍、オスプレイ抗議対策


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 米軍普天間飛行場野嵩ゲート前で、米軍が「米国国内治安維持法」に基づき、基地内への立ち入りを禁じる警告板を設置していたことが13日までに分かった。基地の立ち入り制限については刑事特別法が適用されるが、日本に適用できない米国内法を根拠としたことに「主権侵害」などの批判が上がっている。

米国国内治安維持法は、思想統制につながるとして米国内で反発を招いたこともある法律で、オスプレイ配備に伴う抗議行動が活発化した10月1日に設置されたことに、市民らは「威嚇だ」などと反発した。反発や一部報道を受け、日本政府は米軍に撤去を要請、米軍は13日午後、撤去した。
 警告板は、オスプレイが普天間飛行場に配備された10月1日未明、抗議行動対策でゲート前に設置された防壁に3枚、留められた。「制限区域につき関係者以外立ち入り禁止」「許可を得て立ち入る者は、身体、所持品検査に同意したものとする」とし「米国国内治安維持法」797号を根拠にすると記されている。
 通常、基地内外を隔てるフェンスなどに掲示された警告板は、無断侵入について刑事特別法を根拠に「違反者は日本の法律によって罰せられる」と記している。
 米軍は1983年にも、埼玉県の大和田基地で同様の警告板を設置したが、衆院予算委員会で問題が明るみに出ると、即日撤去し謝罪した。
 警告板設置について外務省は13日、「不適切」との見解を示し、米軍に撤去を要請。これを受け、同日午後1時ごろ、米兵ら約10人がドリルなどを用いて3枚全てを撤去した。
 玄葉光一郎外相は13日の衆院予算委で、照屋寛徳氏(社民)の質問に対し「日本国内でアメリカの国内法によって立ち入りを制限する、というのは不適切な面がある。だから、(米側に)撤去を申し入れた」と明らかにした。
 警告板設置の理由について、在沖米海兵隊報道部は琉球新報の質問に対し「通行人や車両に危険が及ぶ可能性があった」と説明したが、警告の対象が日本人なのか、米国人なのかは明確に示さなかった。

<用語>米国国内治安維持法
 1950年に米国で制定された。起草者の上院議員の名から「マッカラン法」とも呼ばれ、反共的要素が強く、思想統制の危険性から反対する声も多かった。同法797号は国防長官や軍司令官などが定める規則や命令について言及。米軍基地などの保護・保全を侵害した場合、5千ドル以下の罰金か1年以下の懲役、またはその双方が課せられる。

10月に設置された、米国の「国内保安条例」(=米国国内治安維持法)を掲げる警告文=13日午前8時25分ごろ、宜野湾市の米軍普天間飛行場野嵩ゲート
米軍施設のフェンスに常時掲げられている、通常の警告文=宜野湾市の米軍普天間飛行場の野嵩ゲート付近