政権交代前に強行 補正評価書提出


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防衛相、発言一変
 沖縄防衛局が18日、米軍普天間飛行場の県内移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の補正書を、県の虚を突く形で提出した。森本敏防衛相は同日午前中の記者会見で「まだ(補正の)作業中で見通しはつかない」と述べ、県への提出は先との見通しを示していた。“不意打ち”を食らわす提出に加え、衆院選で惨敗し、国民から不信任を突き付けられた民主党政権の駆け込み提出に「どさくさに紛れた提出だ」と、県民から怒りの声が上がる。普天間飛行場への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの強行配備に続き、突然の評価書劇に県と政府との溝は広がる一方だ。

5分前に連絡
 午後3時30分すぎ、沖縄防衛局の職員約20人が、約7千ページに上る補正された評価書24部を段ボールごと、県庁に運び込んだ。県に提出を伝える電話があったのはわずか5分前だった。
 「混乱を避けるためだ」防衛省幹部はこう説明する。昨年末に評価書を県に提出した際、県庁入り口に陣取った移設反対派の住民らの阻止行動で、提出を阻まれた混乱を挙げた。
 防衛省は有識者が知事意見を踏まえて補正すべき点を提言した11日の最終報告提出を受け、先週末までに補正された評価書の印刷を終え、提出準備を整え、時期をうかがっていた。
 政府関係者は「今週、提出するとは聞いていた。だが、今日出すことを初めから、決めていたのではなく、提出できる環境だと判断して出したということだ」と話した。
 「手続き上の問題だけでなく、いろいろな判断が入る。関係省庁と協議をしてから進めるべき問題だ」
 森本氏は午前中の記者会見で、提出には政治的な判断があることを示唆し、協議してから決めるとした。

次政権に引き継ぐ
 だが、提出後の会見で、森本氏は「政治的な影響や要素は入っていない。われわれは事務的な手続きに従ってやる」と、あくまでも「事務的な手続き」と強調。提出判断についても補正作業が完了次第、提出することを既に決めていたとし、発言を一変させた。
 一方、県幹部は「5分前に『これから出す』と連絡するのは普通じゃない」と違和感を示した。仲井真弘多知事も三役で予算の調整中に聞き、驚いたという。
 補正された評価書が公告・縦覧にかけられるのと同時に辺野古への移設に向けた政府の埋め立て申請が可能になる。森本氏は「次の政権に引き継ぐ」としており、自公政権は申請時期について難しい判断を迫られることになる。
 知事や名護市長らが県外移設を強く求める中、辺野古移設を強行に進めれば、自民党が掲げる県との信頼関係の回復が遠くのは必至だ。(問山栄恵、内間健友)