地位協定 日韓で差 訴前の身柄引き渡し


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 【米ワシントン21日=松堂秀樹本紙特派員】米国が同盟国での米軍人、軍属、家族の法的地位を定めた地位協定で、米軍関係者による公務外の犯罪について、日米地位協定と韓米地位協定の起訴前の身柄引き渡しに関する合意事項に差が出ている。

日米地位協定は、起訴前の身柄引き渡しについて米側が好意的考慮を払うとした犯罪が殺人と強姦(ごうかん)(女性暴行)の2種類に限定されているのに対し、韓米地位協定では殺人、強姦のほか、放火、身代金目的誘拐、薬物犯罪、飲酒運転致死罪など、対象を12種類挙げている。
 ことし5月には同合意事項から起訴前の身柄引き渡しの障害となっていた「24時間以内」の削除に米韓が合意するなど運用改善がさらに進んだ。
 刑事裁判権に関する取り決めは双方の主権に関わることから地位協定の核心部分とされるが、米政府は日本と同じ東アジアの同盟国の韓国との地位協定で運用改善を進めている形だ。
 米国防総省は本紙の取材に対し「地位協定はそれぞれの国との緊密な関係の下で締結しており、比較はしない」と述べ、韓米地位協定の水準に合わせた、日米地位協定見直しに否定的な見解を示している。
 韓米協定は1953年の朝鮮戦争の停戦協定結後も駐留を継続した米軍の関係者による犯罪が続発したため66年7月に制定。80年代に米軍関係者による犯罪が相次いだため地位協定改定を求める声が上がり、91年に、それまで韓国に対して自動的に刑事裁判権を放棄するよう定められていた条項を削除した。
 その後も米軍関係者による殺人事件などが続発して反米感情が高まり、2001年には12種類の悪質な犯罪について「裁判終結後」としていた身柄の引き渡し時期を「起訴後」に改めた。同時に韓国側が要請した場合は、殺人や強姦を含む12罪種について「24時間以内の起訴」を条件に米側が身柄引き渡しに好意的考慮を払うことを定め、協定に付随する合意事項を改定した。
 一方、日米地位協定は1995年の少女乱暴事件をきっかけに改定を求める県内世論を受け、起訴前の身柄引き渡しについて(1)殺人(2)強姦―の2罪種のみを具体的に明記して「米側が好意的考慮を払う」ことで運用改善したが、強姦の被疑者でも日本側に身柄が引き渡されないまま事件が処理されるケースもある。国防総省は日米地位協定の改定について「差し迫った理由がない限り改定に向けた再交渉は避ける」としている。