唱えに母への思い 組踊「孝行竹壽之巻」、長ぜりふにめりはり


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親孝行を尽くす金松(金城真次、左端)へ北山の按司(川満香多、右端)がほうびを与える場面=6日、浦添市の国立劇場おきなわ

 国立劇場おきなわ企画の組踊「孝行竹壽之巻(こうこうちくじゅのまき)」(総監=宮城能鳳、立方指導=真境名律弘、地謡指導=城間徳太郎)が6日、浦添市の同劇場で上演された。新年最初の同劇場企画公演。母を思う息子の孝行心が呼んだ奇跡を描いた。

 孝行息子の金松(金城真次)は年老いた母(天願雄一)と二人暮らし。病を患う母から「竹の子が食べたい」と頼まれた金松が雪山へ向かう。
 全5場のうち、第1場は金松役の金城のみが登場。母の病状を気遣い、必死に竹の子を探す様子を唱えや道行きの中で表現した。長いせりふは区切りの良い所で間を取って視線を動かしつつ、めりはりをつける工夫が感じられた。
 母へ食べさせる竹の子がなかなか見つけられずに金松は疲れ果てて山中へ倒れ込む。その時、神の啓示があり、竹の子が生え出る。金松はそれを刈り取り、喜んで持ち帰る。
 稽古の際、小道具や照明などを使って竹の子を生え出させるかどうか議論していたが、結果として演者の唱えや所作だけで表した。写実的な演出効果はなるべく抑えて表現する組踊の特徴を生かした。
 実際には竹の子は見えない中、組踊を見る側としては想像力を働かせて鑑賞することが必要になる。立方・地謡の表現力も問われると同時に、そうした組踊の特徴が現れる場面に関する解説もより丁寧な形があると、さらに観客の興味を引くことができるのではないかと感じた。
 金松の親孝行な行いを聞いた北山の按司(川満香多)は、ほうびとして古宇利島の領地を与える。金松は母へ報告し、屋敷で祝いの舞踊が続く。
 物語としては、全体の筋が見えた後もしばらく祝いの場面が続く、変わった構成にも感じたが、孝行心が込もった唱えの数々は興味深かった。立方、地謡とも各場面の心情を呼吸を合わせ表現した。一部で、立方のせりふがつまって言い直す場面もあったのは惜しまれた。(古堅一樹)

※注:城間徳太郎の「徳」は「心」の上に「一」