コウモリ食害、深刻 かんきつ類1900万円余も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【北部】北部のかんきつ類が、準絶滅危惧種のオリイオオコウモリによって深刻な食害を受けている。2011年度は名護市で約981万円、本部町で約900万円の被害があった。例年は1~2月に熟するタンカンの被害が主だが、12年度は台風による餌不足から、9~10月に温州ミカンも被害に遭った。

農家はタンカンに11年度以上の被害が出ることを懸念。本部町は、網の掛け方を改善した食害防止策の検証に乗り出す。
 オリイオオコウモリは熟したかんきつ類を好むという。県営農支援課によると、11年度のコウモリによるかんきつ類の被害額は、県全体で2285万円。名護市、本部町を中心に5市町村で被害が報告された。
 コウモリは夜行性のため被害の全容を把握しにくいという。そのため名護市と本部町は「実際の被害はもっと大きい」とみている。
 伊豆味みかん生産組合によると、12年度は温州ミカンを栽培する20軒余の農家全てが被害を受けた。ある農家は7トンの収穫を予定していたが、1~2トンしか収穫できなかったという。熟す前のタンカンが食べられたとの報告もある。
 ミカン畑全体に掛けた網の隙間や破れた部分からコウモリが侵入していたことから、本部町は1本ずつの木に網を掛けて保護する方法に着目。1月中に農家32戸に計1360枚の網を配り効果を検証する。1本掛け用の網は国の補助事業の対象にならないため、一括交付金を活用する。
 一方、食害を訴える市町村の声を受けて、県は第11次鳥獣保護事業計画(12~16年度)に、オリイオオコウモリの生息分布や農作物被害、防除効果の調査を盛り込んだ。12~13年度に調査する予定だ。
 農作物への食害はハシブトガラスなども深刻だが、ハシブトガラスが捕獲を許可されている一方で、オリイオオコウモリは許可されていない。
 県自然保護課は「捕獲の申請が来たことがないので分からないが、(準絶滅危惧種のため)許可は難しいと思う。捕獲しない方法で食害を防ぎたい」としている。
(伊佐尚記)

オリイオオコウモリに食べられたとみられるミカン=12月28日、本部町伊豆味の池宮城農園
1本掛けの網を掛けたミカンの木=12月28日、本部町伊豆味の池宮城農園