「可決」実は「否決」 伊平屋前村長へ退職金返還要求


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 【伊平屋】ごみ処理施設建設をめぐって村に損害を与えたとして、前村長の西銘真助氏に対し退職金返還を求め提訴する議案を伊平屋村議会(定数8)が採決した際、議員が投票した、「反対」と扱うべき白票を「無効」と判断したため、否決となるべき議案が賛成多数で可決されていたことが6日、分かった。

町村議会議長会によると、議会運営上、誤って可決した議案でも、議会開会中に異議が出ず閉会すれば採決の結果は確定する。採決に参加した議員らは「勉強不足の失態だ」などと述べ、反省の態度を示した。
 伊平屋村は2011年の村議会9月定例会で同議案を提案した。議案の記名投票では、賛成3人、反対2人、白票2人だった。同村議会会議則第84条は、賛否を表明しない、または明らかにしない投票は「否とみなす」としている。白票は「否」とみなされるため、賛成は少数となるが、村議会は賛成多数で可決した。
 昨年12月、議会で訴訟をめぐる一般質問があり、閉会後に議会事務局が議事録を確認したことで問題が発覚した。当時、議長だった伊礼幹夫議員は「まだ詳細を把握していない」と述べ、事実関係を確認する考えを示した。白票の正しい扱いについて議員らは「知らなかった」「認識不足だった」と述べ、当時、議会事務局も把握していなかった。
 町村議会議長会によると、誤った議決でも異議が出されず次の議案に進行した場合や、閉会すれば採決の結果が確定するという。また、地方自治法第176条では、議決に異議があれば、村当局は議決から10日以内に再議できるが、村は議決ミスを1年以上経過した12月に把握した。
 議決によって提訴された西銘氏は議決のミスについて「村の議決機関である議会が、ごみ問題を含む政治的な対立による感情に流された結果だ。裁判所は訴えを却下するべきだ」と批判した。同村は、誤った議決でも議会運営や地方自治法上、確定していることから裁判で争うとしている。
 西銘氏が村長だった当時、ごみ処理施設建設の契約を一方的に破棄されたとして民間会社が村を相手に損害賠償請求訴訟を起こした。1審と2審で敗訴した村は上告したが、最高裁が不受理としたことで約1億4千万円の賠償命令が確定した。09年の村長選で伊礼幸雄氏が当選した同村は、11年11月に西銘氏に退職金返還と損害賠償を求めて提訴した。(嘉陽拓也)