純真な恋 切々と 沖縄芝居研「染屋の恋唄」


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歌劇「染屋の恋唄」で、死んだと知らされた(右から)蒲太(金城)と再会するマカテー(伊良波)と見守る染屋の主人(春)、その妻(瀬名波)=1日、浦添市の国立劇場おきなわ

 県伝統芸能公演の沖縄芝居公演が1日、国立劇場おきなわで行われ、若手実演家の有志が参加する沖縄芝居研究会(伊良波さゆき代表)が初出演した。歌劇「染屋の恋唄」(高江洲紅矢作)では、染屋職人・蒲太による高級遊女マカテーへの純真な恋を情感たっぷりの掛け合いや音楽で表現した。

 「染屋の―」は染屋職人の蒲太(金城真次)が那覇の町で、遊女マカテー(伊良波さゆき)と出会い、一目ぼれ。3年後、蒲太は染屋の主人(春洋一)に思いを打ち明けるが、マカテーは身分の高い士族を相手にする高級遊女。蒲太は士族の姿に成り済まし、主人と一緒に辻遊郭を訪ねてマカテーと一夜を共にする。
 冒頭は行商人が行き交う那覇の光景を描いた。物売り(知念亜希)や鍋工(宇座仁一)、通行人(福島千枝、富山あすか、嘉数幸雅、當間栄助)がユーモアたっぷりに演技。短い時間ながらにぎやな町の雰囲気を生み出し、これから始まる物語へ期待を抱かせた。
 蒲太役の金城は、染め屋の仕事で汚れた手を着物に隠して辻遊郭を訪れる場面で、身分がばれないように不自然な動き方をして笑いを誘った。一夜を明かした後、汚れた手を見られた蒲太が正直に身分を明かし、3年間も思い続けていたことを切々と打ち明ける場面は、純真さが浮かんだ。伊良波は、最初は汚れた手を見て驚くが、蒲太の思いを聞くうちに、胸を打たれていく変化を演じた。
 蒲太の先輩職人の次良役・嘉数道彦と亀謝役・平敷勇也はコミカルな演技で笑いを誘った。春や瀬名波孝子、赤嶺啓子、中村志津子ら脇を固めたベテランの演技は舞台を引き締めた。地謡(歌三線・具志幸大、新垣俊道、箏・浦崎愛梨、笛・澤井毎里子、胡弓・米増健太)も各場面の心情を情感を込めて奏で、物語を引き立てた。
 喜歌劇「貞女小」は嘉数、知念、宇座、中村が出演し、10年ぶりに帰郷した里之子が帰宅途中に見た美女を妻と気付かずに声を掛ける喜劇をユーモアたっぷりに演じた。
 ベテラン役者らを講師に、芝居で描かれている歴史や背景も深く掘り下げる活動を目指すという同会はまだ始まったばかり。今後の継続的な活動に期待したい。(古堅一樹)