県へ「ふるさと納税」増 特典付き証明書発行


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 出身地や応援したい自治体に寄付する「ふるさと納税」の沖縄県分の受入額が伸びている。昨年11月から開始したサポーター証の発行など観光客らに寄付を呼び掛ける新たな取り組みが効果を上げているようだ。県の担当課は県外の沖縄ファンと沖縄をつなぐ新たな仕組みとしてさらに充実させ、単なる寄付制度ではなく、リピーターの増加や県産品の需要拡大などにもつなげたい考えだ。

 2012年1月~10月までの沖縄県への寄付は月平均で35万円(3・5件)程度と伸び悩んでいた。このため、県は12年11月に、制度の周知などを目的に、ゆいレール千円分の乗車券を兼ねたサポーター証「美ら島ゆいまーるカード」を発行、寄付者への交付を始めた。発行後は、11月が73万円(13件)、12月が257万円(48件)と大幅に増加しており、年明け以降も「寄付をしてみたい」といった問い合わせが増えているという。
 沖縄県の受入額は11年度に538万円と制度開始以来最高となったが、全都道府県と比較すると30位にとどまっていた。そこで県が注目したのが滋賀県の取り組みだ。11年度の受入額を見ると、東日本大震災の被災県を除くと全国トップの約8700万円。ふるさと納税で集まった財源の使途を琵琶湖の保全などに特化。使い道を明確化することで寄付をしようとする人の理解を深め、実績を伸ばしているとみられている。
 これらを参考に沖縄県はサポーター証の発行に合わせて、新たに作成したパンフレットで、寄付金の活用例として「首里城や識名園など歴史的建造物の保全」「赤土流出対策やオニヒトデ駆除」「芝居、島唄など芸能活動の支援」など、これまで以上に使い道を具体的に表記し、寄付者への理解を求めている。
 ふるさと納税制度が導入される直前の07年に東京のNPOが全国の男女を対象に実施した調査では、ふるさと納税をしたい都道府県として、1位の北海道とともに他府県を大きく引き離して沖縄県が2位に入っている。今後の工夫によってはさらに受け入れが伸びる可能性がある。
 県もこれらのデータを念頭に寄付の拡大を目指す考えだが、1度の寄付だけに終わらせず、寄付者との関係を強化していきたい考え。今後は各施設での優待が受けられるようサポーター証の機能を充実させ、寄付者が希望した場合には、観光イベントや特産品の情報を送付することも検討する。県税務課の呉屋陽慈・課税班長は「単なる寄付ではなくて、沖縄を応援したいという人と沖縄とのつながりを太くしていける仕組みにしていきたい」と話した。(新垣和也)

<用語>ふるさと納税
 出身地などの自治体に寄付をすると居住地の住民税が控除される制度。2008年の地方税法の改正でスタートした。大都市に税収が偏ることを是正し、地域を活性化することが目的。