米海兵隊、存続へ躍起 合同訓練公開しアピール


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 【米ワシントン=松堂秀樹本紙特派員】米政府の財政難で国防費の強制削減が3月に迫る中、米海兵隊が組織の生き残りを懸けて活動を活発化させている。軍事力を強化して海洋進出を図る中国に対抗するため、国防総省は統合エア・シー・バトル(空海戦闘、ASB)構想に沿ったアジア太平洋地域重視の戦略を進めている。

同構想は空軍や海軍が中心となることから、米国内で海兵隊不要論も出ているが、海兵隊は自衛隊との沖縄周辺の離島奪還を想定した合同訓練を9、13日に報道陣に公開するなど、存在意義をアピール。さらに2013年からは沖縄を拠点にした巡回配備を強化する方針を打ち出しており、在沖海兵隊は計1万9千~2万人まで増加する見込みだ。
 日米両政府は06年の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で「キャンプ・ハンセンは、陸上自衛隊の訓練に使用される」と米軍施設の共同使用による連携強化に合意。尖閣諸島をめぐる日中間の緊張が高まる中、在沖米軍基地を拠点にした米軍と自衛隊の連携を強める動きが加速しそうだ。
 中国は海洋権益の獲得を目指して対艦ミサイルを配備するなど、接近阻止・領域拒否(A2AD)戦略を進めているとされる。これに対し、米国防総省は最新鋭兵器をアジア太平洋地域に配備するほか、兵力の分散配置などを進めて中国を事実上封じ込めるASB構想を推進していく方針。
 ASB構想は、空軍と海軍が中核となっており、制海空権の確保なしに単独で戦闘地域に投入されることがない海兵隊は「沖縄から移動させても、緊急事態における作戦遂行上、ほとんど支障はない」(マサチューセッツ工科大学教授のリチャード・サミュエルズ氏)、「中国への懸念はあるが、それに対応するのは空軍や海軍。海兵隊が中国に乗り込むことは決してない」(バーニー・フランク前下院議員)など米国内で役割が疑問視されている。
 こうした動きに対し、海兵隊は「(ASB構想から)取り残されるべきではない。第2次世界大戦時のように上陸作戦では海兵隊と陸軍の連携が重要だ」(ミルズ米海兵隊戦闘開発司令部司令官)などと反論し抵抗している。「抑止力維持」を理由に海兵隊を沖縄に引き留めたい日本政府と、組織縮小にあらがう海兵隊の思惑が一致しており、沖縄に負担を押し付ける構図だ。