「隠れた名盤」伊藤美裕『あなたの花になりたい』

結婚ソングのようなラブ・バラード
　大阪府出身１９８７年生まれの女性の４ｔｈ。“名盤”と呼ぶには更に＋αの魅力が欲しいところだが、今後への期待を込めて紹介したい。

　表題曲は末光篤が、作曲者としての出世作である木村カエラ『Ｂｕｔｔｅｒｆｌｙ』風にと依頼されて仕上げたような爽やかなミディアム調のラブ・バラード。これまでのパンチの利いた歌唱とは対照的に、伊藤も綺麗に歌っている。まるで結婚ソングのタイアップ曲のようだ。
　個人的に面白く思ったのが、表題曲と同じ作詩：松井五郎×作・編曲：末光篤のコンビによる『月の鍵』だ。好きと言えず胸に閉じ込めていた恋心を月が鍵を解くという心の描写も鮮やかだし、全面に力強く響くピアノの音色が高鳴る胸の鼓動のようだし、さらに伊藤の声が寂しげで報われない気持ちが伝わってくる。
　彼女の翳りある声質から、７０年代後半にデビューした金井夕子を思い出した。それゆえ、近年の音楽に少ない叙情的な部分を大切にしたい人ならばハマれるはず。
　（日本コロムビア・１３００円）＝つのはず誠
　（共同通信）
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つのはず誠のプロフィル
　つのはず・まこと　１９６８年生まれ。総合化学会社、音楽宣伝会社勤務を経て、Ｔ２Ｕ音楽研究所設立。音楽市場分析、コンピレーションＣＤの企画・選曲などを手がける。
(共同通信)