福島県相馬市「1日も早く漁を」 早川さん夫妻、真の復興願う


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津波で大破した相馬双葉漁業協同組合相馬支部の事務所前に立つ早川利枝子さん(左)と夫の幸延さん=福島県相馬市

 東日本大震災の巨大津波で大きな被害を受けた福島県相馬市沿岸部にある「松川造船」工場。西原町出身の早川利枝子さん(57)=旧姓・泉川=と工場長を務める夫の幸延さん(61)は津波被害から回復し、稼働を再開した工場を眺めながら「船は造れるようになったが、原発事故の影響で漁師が漁に出られない。早く漁ができるようになってほしい」と一日も早い事故収束と漁業の本格再開を待ちわびている。

 海沿いに位置する工場は津波にのみ込まれ、工場内は流されてきた船や車、がれきであふれ返っていた。造船用の機械も壊れていたため、工場を再開できたのは震災から約8カ月後の2011年11月からだった。
 しかし、原発事故の影響で震災後、福島県の漁師は漁ができず試験操業だけを行っている。幸延さんは「船造りは再開できるようになったが、漁師が漁に出ることができない」とやりきれない表情を浮かべる。震災前、仕事の半分を占めていた漁船補修の依頼はぱたりと途絶えている。
 「漁師町」の尾浜はにぎわいがなくなり、閉店する居酒屋が増えてきた。利枝子さんと幸延さんは「津波被害からは少しずつ回復してきているが、漁業が再開され、海に出ていく漁師の元気な姿が早く見たい」。漁師町の「真の復興」を切望していた。(当銘寿夫)