日中交流 根広げる 福州市民と県人「イモの会」結成


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エイサーの練習に励むイモの会のメンバー=3月28日、中国福建省福州市の福州大学(玉城里那さん提供)

 沖縄とゆかりの深い中国福建省福州市で、県出身者と現地の中国人らが親交を深めようと、団体「イモの会」をこのほど結成した。20日には琉球王国時代の琉球人が埋葬されている福州市内の琉球墓園で、清明祭の時期に合わせてエイサーを披露する。

尖閣諸島をめぐり日中関係が悪化する中、「このような状況だからこそ、地中に広がるイモの根のような民間レベルの交流が重要だ」と語る会のメンバー。友好の懸け橋になろうと、本番に向け練習に取り組んでいる。
 県産業振興公社の現地委託駐在員を務める玉城里那さん(24)=名護市出身=によると、福建省には少なくとも県人20人が暮らしている。イモの会は昨年11月に結成され、このうち玉城さんを含め17人が加わる。中国側は沖縄に留学経験などがある学生や学者ら12人が参加する。
 沖縄と福建は500年以上の交流があり、県と福建省、那覇市と福州市、浦添市と泉州市、宜野湾市と厦門市がそれぞれ友好都市の締結を交わしている。会の名称は、野国総管が1605年に福建から持ち帰り、琉球の食糧不足の改善に貢献した「イモ」の伝来にも由来。玉城さんは「沖縄と福建で民間から絆を深くし、イモの根や、つるのように四方八方へ仲間の輪を広げたい」と語った。
 福建では、10年ほど前に県人からエイサーの太鼓が福建師範大学、福州大学、泉州市の華僑大学、泉州師範大学に贈られた。華僑大学では、サークル活動として現在もエイサーに取り組んでいるという。
 琉球墓園では、県人留学生をはじめ日本人留学生、中国人学生らが踊る。学生らは現在、福州市の3大学で練習に励んでいる。
 参加する中国人大学生(20)は「交流を重ねれば、過度の偏見や歴史に対する認識のギャップも生まれない。日ごろの友人関係のように単純で楽しい民間交流ができれば、釣魚島(尖閣諸島の中国名)の問題も平和的に、スムーズな解決が可能だと思う」と語った。
 福建師範大学の頼正維教授は「両国それぞれの主張はあるが、少しずつ話し合いの場を持ち解決していくことが重要だ。中国は先に発展した日本から学ぶこともあるし、日本は中国と関わりを持つことで経済を安定させることにつながるだろう」と語った。
(島袋貞治)