4強激突へ 県春季高校野球 準々決勝


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 第60回県高校野球春季大会(県高校野球連盟主催、琉球新報社共催)第10日は2日、北谷公園野球場などで準々決勝4試合を行った。真和志と北山が初、八重山と八重山商工は3年ぶり4度目のベスト4進出を決めた。

八商工は4―3でシード校の興南に競り勝ち、八重山は4―0で前原に快勝。真和志は着実に加点して4―1で中部商を下し、北山は1―0で糸満との投手戦を制した。大会第11日は4日、同球場で八重山―真和志、北山―八商工の準決勝を行う。

<八重山>2死から着実に加点
 打線が4得点のうち3点を2アウトから奪えば、先発投手の池村英隆は毎回のように走者を背負いながら完封。しぶとい試合運びで4強進出を決めた八重山ナインに、仲里真澄監督は、開口一番「百点満点でしょう」と表情が緩んだ。
 四回、均衡を破った。2死から西平奎太が「ストライクゾーンに来た球は全部打ってやろうと思っていた」と、直球を捉え中前へ。盗塁で二塁へ進んだ後、続く大浜雅史の左前打が相手失策を誘い、1点を先制。五回にも2死一塁から具志堅興羽の二塁打で1点を加え、最終九回は2得点でダメを押した。
 体調が万全ではなかったという池村は、再三得点圏に走者を許したが、変化球を効果的に使って相手の打ち気をかわし、本塁は踏ませなかった。「ギアを上げた」という後半は打ち取る場面が増え、野手陣も攻守でエースをもり立てた。
 現チーム始動時は、攻守とも詰めの甘さが目立ったという。冬場の厳しい練習を乗り越えた今大会は、1、3回戦で1点差の接戦を制するなど、たくましさを存分に発揮。西平は「一人一人が自信を持って打席に立っている」と胸を張る。
 準決勝は、好投手の譜久村誠悟を擁する真和志が相手。池村は「次も接戦になると思う。完封する気持ちで臨みたい」。勢いを加速させた全員野球で進撃を誓う。(大城周子)

<真和志>砂邊 投手助ける一発
 エースを援護したい一心で生み出したアーチだった。五回表。真和志の3番砂邊大州が3ボールからの4球目を捉えると、打球は左翼スタンドに吸い込まれた。「投手に疲れがたまっていると思ったので、打撃で楽にしてあげたかった」。初戦から一人で投げ抜いている譜久村誠悟を鮮やかな本塁打でバックアップした。
 この日は第1打席が三振、第2打席は内野ゴロと、コースを厳しく攻める中部商の先発・仲井間雄也に苦しめられた。3度目の打席に向かう前、主将の比嘉辰樹に声を掛けられた。「ボール球を振って追い込まれているから、打てる球だけを振っていこう」
 打席に立ち、最初の3球は全てボール球。今までなら手を出していたが、「これは打てない」と冷静に見極めた。4球目に来たのは真ん中高めの直球。「3ボールでもストライクゾーンに来た球は思い切り振ると決めていた」と見逃さなかった。
 砂邊にとって高校通算21本目の本塁打で、「チームでは一番多い」と長距離砲としての自信をのぞかせる。それでも「今日は投手を助けたかったので、打ててホッとしている」と仲間の力になれた喜びが大きい。チームとしては初めての4強入りが決まり、「(準決勝でも)はつらつとしたプレーで自分たちの試合に持っていきたい」と笑顔を見せた。(平安太一)

<北山>エース平良 12奪三振
 最後の打者を三振に仕留めると、北山の平良拳太郎が満面の笑顔で右手を突き上げた。この日、12個目の三振。前日の3回戦で延長十一回を投げ抜いた疲れを見せず、チームを初の4強に導いた。
 息詰まる投手戦で、ピンチらしいピンチは序盤だけだった。「自分がゼロに抑えていれば絶対にみんなが点を取ってくれると思っていた」と平良。180センチの長身から横手投げで腕をしならせ、切れ味鋭い直球とスライダーで糸満の機動力を封じた。
 そして七回、打線がエースの奮闘に応える。主将の仲里正作が死球で出塁、犠打を絡めて2死二塁のチャンスを築いた。6番神谷塁が真ん中に甘く入って来た球を中前へ。仲里は迷わず本塁を目指し、貴重な決勝点を挙げた。神谷善隆監督は「苦しい展開でも、後半以降に主導権を握れるようになってきた」とナインの成長に目を細めた。
 この日、スタンドには保護者や在校生が大勢詰め掛け、ブラスバンドの演奏に乗せて大声援を送った。「周囲に期待されればされるほどプレッシャーはかかるけど、それを楽しめる練習はしてきた」と平良は言う。4強に進んだチームには好投手がそろう。仲里は「自分たちが(打撃で)拳太郎を助けられるかが鍵になる」と言葉に力を込めた。
(大城周子)

<八商工>初回先制 流れ渡さず
 八重山商工の勢いが、強豪校をのみ込んだ。相手失策を自らのチャンスにする手堅さで、初回にいきなり2点を先制。序盤で流れをつかみ、試合を優位に進めた。「10回戦って1回勝てるかどうかの相手」と伊志嶺吉盛監督は力の差を認める。それでも選手らは相手を意識せずに、自分たちの野球に専念して勝利を手にした。
 前日の首里戦で3安打と沈黙していた打線も、この日は好調だった。「投手に頼りきりではいけない」という新城仁貴主将の思いを全選手が共有し、積極的な打撃で7安打を放った。
 勝負を決めたのは八回裏、根間信明の一打だった。2死一、二塁の場面で高めに浮いた直球を中前に運ぶと、二塁にいた新城が全力疾走で本塁を陥れた。「今日は投手が頑張っていたので、絶対に打ちたかった」と根間。八回まではタイミングが合わずに凡打に倒れていた。最後の打席は伊志嶺監督から「高めの真っすぐを狙え」と指示され、言葉通りの打撃を実践した。
 投手陣も力を発揮した。先発の加藤弦は「名前負けしないように、いつもの投球を心掛けた」。四回に大底翔に継投するまで、興南打線を2安打に抑える力投を見せた。「真っすぐがよくて、スライダーで打ち取れた」という大底も3回を投げ、被安打1の好投。「次の試合もいつも通りの投球で試合のリズムをつくりたい」。両投手は引き締まった表情で次戦を見据えた。(平安太一)

<きのうの結果>
▽準々決勝
八重山 4―0 前原
真和志 4―1 中部商
北山 1―0 糸満
八商工 4―3 興南

<あすの試合>
▽準決勝
【北谷】10時
八重山―真和志
北山―八商工

前原―八重山 5回表2死一塁、具志堅興羽の右中間二塁適時打で八重山が2点目を挙げる=2日、北谷公園野球場(渡慶次哲三撮影)
真和志―中部商 5回2死。追加点となるソロ本塁打を放つ真和志の砂邊大州=2日、宜野湾市立野球場(諸見里真利撮影)
糸満―北山 12奪三振で糸満打線を完封した北山の平良拳太郎=2日、北谷公園野球場(渡慶次哲三撮影)
八商工―興南 8回裏2死一、二塁。八商工の根間信明が中前打で追加点を奪う=2日、宜野湾市立野球場(花城太撮影)