町と県“探り合い” 竹富公民教科書問題


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
教科書問題における県教委の姿勢(クリックで拡大)

 本年度から竹富町内の中学校で使用する公民教科書をめぐり、県教育庁と竹富町教育委員会それぞれの対応が正念場を迎えている。同庁は、3月に来県した義家弘介文部科学政務官の示唆した訴訟の提起を避けようと、町教委に石垣、与那国との教科書の一本化を求めており、町教委の結論を待っている。

一方、町教委は「(助言や指導など)県の具体的な対応を見てからしか動けない」との姿勢を示し、2日現在、両者の“探り合い”が続いている。ただ8日には新学期が始まる。それを前に結論を出せるか注目される。
 竹富町教委は、義家政務官から直接、教科書の一本化を求められたものの、慶田盛安三教育長は「県を飛び越えて国に何かしらの報告をすることは考えていない」と強調する。県が「指導」「助言」などの行政行為をしない限り「動けない」という立場を取る。慶田盛教育長は「県教育長が代わり、どういうふうに引き継がれているのか知りたい」と県教委の対応に困惑している。
 一方、県教育庁は2011年10月時点で「県教委が竹富町教委に対し(育鵬社版を使うとした)答申通りに採択するよう求めるのは無理がある」とし、一本化を図るための手段として「3市町教委に協議の場を求める必要がある」との見解を打ち出していた。
 だが、ことし3月1日の義家政務官の来県後、大城浩教育長(当時)は同4日、「文部科学省や竹富町と話し合っていきたい」とコメント。八重山採択地区を構成する石垣、与那国には触れず、竹富町と協議する姿勢に転じた。3月30日には同庁幹部が町教育委員と面会し、協議の中で教科書の一本化を求めた。
 同庁義務教育課は、琉球新報の取材に対し「義家政務官の指導を重く受け止めている。どうにか事態を解決しなければならない」として一本化を求めた背景に義家氏の指導の影響があったことを認めた。
 ただ「一本化」を行政行為の「指導」として求めることには慎重な姿勢だ。「指導」によって同庁に一定の責任が生じることを回避したい思惑が働いているとみられる。
 文科省の内部事情に詳しい高嶋伸欣(のぶよし)琉球大学名誉教授は「文科省の役人は是正要求も訴訟もハードルが高いと考えている」と分析。義家政務官が「強権発動」をちらつかせながら竹富町教委に迫ったことは「義家氏のスタンドプレーだろう。県教委も竹富町教委も冷静な対応が必要だ」と話した。(稲福政俊、当銘寿夫)