年度途中の変更困難 八重山公民教科書


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 【東京】文部科学省が竹富町教育委員会に対し、同一採択地区内の石垣市、与那国町と同じ保守色の強い育鵬社版公民教科書を採択するよう指導している件で、諸見里明県教育長は9日、同省初等中等教育局の永山裕二教科書課長を訪ね、八重山採択地区の教科書が一本化に至らなかったことを報告した。

諸見里氏は「年度の途中で教科書を変更することは厳しい」と述べ、東京書籍版の教科書を配布した竹富町教育委の決定を尊重する考えを示した。
 同氏によると、永山課長は「引き続き指導を続けてほしい」と育鵬社の教科書への一本化をあらためて求め、両者の話し合いは平行線に終わった。
 諸見里教育長は同日午前9時40分ごろから約30分間、省内で永山教科書課長ら担当者と面談した。面談後、同省で本紙などの取材に対し、教科書採択について(1)県は中立的な立場で業務を遂行していく(2)竹富町の決定を尊重せざるを得ない(3)年度の途中で教科書を変更するのは厳しい―の3点を同省教科書課に伝えたことを明らかにした。
 東京書籍版の教科書の配布を決めた竹富町教育委員会の決定を事実上容認した県の方針に対し、永山教科書課長は「竹富町を指導し、教科書を一本化させてほしい」と述べ、文科省の方針に変更がないことをあらためて示した上で、町の回答内容を見て対応を検討する考えを示した。
 一方、下村博文文科相は同日の会見で、竹富町教育委員会が東京書籍版の教科書配布を決定したことについて「教科書無償措置法に反する違法状態であることは変わりない。まだ竹富町からペーパー(文書)による回答が来ていない。回答を見てから対応を検討したい」と述べ、引き続き県に指導するよう求めた。
 これまで、義家弘介文科省政務官が県や竹富町に対して教科書の一本化を指導したが、県は3日付の文書で一本化できなかったことを文科省に報告した。
 竹富町は採択権は町教委にあるとして保守色の強い育鵬社の教科書ではなく、東京書籍版の教科書を配布した。