国の無責任に起因 降下訓練民間地着地


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<解説>
 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイによるパラシュート訓練で兵士が民間地に降下した事実は、同機の配備に当たり日本政府が再三強調した「沖縄への配慮」の欠如を示すものだ。沖縄で米軍の意のままに訓練を許してきた政府の無責任さに起因する。

 伊江島補助飛行場でのパラシュート降下訓練は1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で合意、これまでもCH46ヘリコプターが自治体への事前通知なしに行ってきた。しかし県民の間にはオスプレイの安全性への懸念が強い。CH46は認められていたから、オスプレイも訓練は可能―という論理を政府が持ち出したとしても、県民には理解しがたい。
 伊江島でのオスプレイのパラシュート訓練は、同機の日本での運用を定めた環境レビューに記載されていない。政府は住民への危険性について真剣に検証したのか、疑問符が付く。
 小野寺五典防衛相は在日米軍副司令官に4月、「本土で訓練を行う際には情報提供をお願いしたい」と求めた。一方でオスプレイの沖縄配備後、本島全域に広がる同機の訓練で、日本政府が米側に主体的に情報提供を求め、地元に開示したことは皆無に等しい。本土と沖縄で対応を使い分ける「二重基準」も際立つ。
 在沖米陸軍は取材に対し「住民に被害がなかった」と強調。だが読谷村でのトレーラーによる少女圧死事故など、航空機からの落下物による悲惨な事故が続発した歴史を県民は忘れてはいない。
 両政府は4月30日、普天間飛行場に同機を12機追加配備する方針で合意したが、2月に発生したオスプレイからのボトル落下の再発防止策も明確に示されていない。不安が払拭(ふっしょく)されない中で事故が相次ぐ限り、県民の理解は遠のき、反発がより強まることは避けられない。
(池田哲平)