在沖海兵隊減に言及 新戦略提唱者 米国防大教授


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 米軍の駐留・機能を強化せずに既存の枠組みの中で軍事的、経済的優位性を保つ新国防戦略「オフショアコントロール」(OC、海洋統制)が日米防衛関係者の注目を集めている。4月中旬には提唱者のトーマス・ハメス米国防大教授(元米海兵隊大佐)が来日し、防衛省幹部らと意見交換した。ハメス氏はこのほど本紙の取材に応じ、「人口が密集している沖縄では訓練が制約されている」と指摘。在沖米軍は増強せず自衛隊と米軍の連携を深めることが同戦略の鍵となると説明した。

 米政府は2012年1月、中国を念頭にアジア太平洋地域重視の新国防戦略を打ち出し、その実現へ向けグアムの軍事拠点化や在日米軍基地への最新兵器配備などの作業を進めている。だが財政難を受けた大幅な国防費削減が迫る中、新戦略の実現性や実効性が疑問視されている。
 こうした中、ハメス氏は12年春、「抑止および相手国に侵略しないという安心感を与え、紛争が発生しても全面戦争に発展することを防ぐ」としたOC戦略を専門誌で発表した。
 在沖米軍については「抑止力としてのプレゼンス(存在)は重要だ」との認識を示す一方、「既に海兵隊の削減が計画されている。沖縄の基地集中は海兵隊も理解しており、沖縄は人口が密集しているため訓練が制約される」と指摘し、オーストラリアへの移転などで海兵隊の沖縄への一極集中を解消すべきだとの認識を示した。(松堂秀樹、島袋良太)

<用語>オフショアコントロール
 トーマス・ハメス米国防大教授(元米海兵隊大佐)が提唱する新国防戦略。東アジアの軍事的緊張が高まった場合、中国の海上貿易を阻止し、軍事的な破壊行為ではなく経済的な消耗戦で事態を沈静化し、全面戦争を回避する。同戦略の確立のため(1)同盟国の軍備強化(2)海上封鎖技術の確立(3)中国軍が設定する第1列島線(日本から台湾、フィリピンに至るライン)の内側を守り、海上封鎖によって外側でも優勢を確保―などを挙げている。