県、海兵隊不要論を紹介 日米安保論文公表


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 安全保障に関する調査・研究を目的に県が昨年度、知事公室に設置した地域安全政策課が8日、日米安保などの研究者論文をまとめた2012年度の成果報告書を公表した。新たに執筆された論文で、同課のホームページで閲覧できる。

県は論文について「県の見解や方針を直接示すものではない」と説明した上で、今後の政策立案などに役立てたいとしている。
 在沖米海兵隊の削減・不要論を提唱するジョージ・ワシントン大のマイク・モチヅキ教授とブルッキングズ研究所のマイケル・オハンロン上級研究員は連名の論文で、普天間飛行場移設問題に関し「ほぼ解決不可能の状態」と指摘。打開策として、在沖海兵隊の占有面積を削減し、本島北部の既存海兵隊基地内に「適度な大きさのヘリポート」を建設することを主張した。
 名護市辺野古移設に異論を唱える新米国安全保障センターのパトリック・クローニン上級顧問は「最適とは言えない可能性のある計画に多額の投資を行い、損失を生む前に、軍事計画立案者の意見に耳を傾けるべきだ」と指摘。外交問題評議会のシーラ・スミス上級研究員は「米軍単独の利用を前提にした基地建設は現実味を失っている。柔軟な発想が必要だ」とし、米軍と自衛隊の連携を主張した。
 昨年10月に県が米国で行った普天間移設問題などに関するシンポジウムの議事録も掲載、仲井真弘多知事は「普天間問題を解決するためのアイデアや沖縄の基地負担の軽減策など優れた考察は、県の研究能力や政策形成能力の向上に大いに資する」との談話を寄せた。

<報告書要旨>
 ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ教授、ブルッキングズ研究所のマイケル・オハンロン上級研究員
 より多くの海兵隊員を米国へ帰し、より広域な太平洋地域に軍需品を事前配備する。普天間は最終的に閉鎖するが、本島にある別の飛行場を海兵隊が限定的に使用する。米国は事前集積艦を日本の領海に駐留させ、危機の際には移転した海兵隊が西太平洋に迅速に復帰できるようにする。
 新米国安全保障センターのパトリック・クローニン上級顧問
 緊急事態の全てに対応できるだけの滑走路の長さが、辺野古崎計画にあるのか。沖縄での訓練軽減、日米両軍の共同配置、軍民共用化など軍同士の統合を前進させるべきだ。
 外交問題評議会のシーラ・スミス上級研究員
 普天間移設の実施をめぐる日米の失敗は、日本やアジア太平洋地域での米軍の政治的持続可能性について、根本から意識変革を図る必要性を示した。
 政策研究大学院大学の道下徳成准教授
 日米両国は軍事プレゼンス(存在感)が地元住民に与える負担を最小化しつつも、信頼性の高い抑止・防衛態勢を維持するという難しい課題に直面している。