命の大切さ学んで ウミガメ保護15年の小林さん


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ウミガメの甲羅の長さを測る小林茂夫さん=4日未明、糸満市

 【糸満】絶滅が危惧されるウミガメの産卵を保護・観察する小林茂夫さん(71)のボランティア活動がことしで、15年目を迎えた。

70歳を超えた現在でも、数週間に数回の頻度で自宅近くの海岸に訪れるウミガメを保護するため、連日深夜まで海岸に陣取る。持病も抱え、活動の継続に不安もあるが「やれる限り、続けたい」と意気込み、暗闇の中で行われる“生命の営み”の観察を続けている。
 小林さんは1999年、勤めていた東京の会社を退職し、糸満市へ移住してきた。ある日、妻の操さん(73)と海岸の散歩中、ウミガメの死骸を発見したことがきっかけで観察を始めた。それ以来、ウミガメが産卵するたびに専門家を訪ね、独学で生態を学んだ。今では、環境省の自然公園指導員に委嘱されているほか、学術上の用途などで、卵を採取できる県の許可を得ている。
 小林さんは、仲間とともにボランティア組織「亀人(きじん)会」を設立。ウミガメの産卵シーズンを迎える4~9月の期間、早朝は砂浜でウミガメが訪れた痕跡を探し、夜から深夜にかけて保護活動をしている。「会の名称は『奇人』、『変人』とかけた。連日、深夜まで観察するので、ばかじゃないとできないよ」と笑い飛ばす。
 一方、活動を続ける中で、周囲のウミガメへの理解が足りないと感じている。夏場になると、海岸近くでビーチパーティーが催され、深夜まで花火や爆竹が鳴り響く。ウミガメは音や光に敏感で、砂浜に上がってこない場合も。小林さんは「産卵は自然界の厳かな儀式。常識的に考えても、深夜まで騒がないでほしい」と訴える。また、ウミガメを食べる文化がある沖縄の場合、県の許可を得ずに捕獲したり、卵を持ち帰ったりする人もおり、頭を悩ませている。
 ウミガメの産卵を初めて見たときから魅了された小林さん。ウミガメへの理解を広げるため、観察を希望する人の見学を受け付けている。「(観察をする際の)ルールを守り、ウミガメを通して、命の大切さを学んでほしい」と語った。小林さんへの問い合わせは(電話)098(997)3390。(梅田正覚)