アジアへの結節点 沖縄発も視野に ヤマトHD木川社長に聞く


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沖縄での事業展開について語るヤマトHDの木川真社長=17日、那覇空港

 ヤマトホールディングス(HD)の木川真社長は琉球新報のインタビューで、沖縄を拠点(ハブ)とした全日本空輸の国際航空貨物事業の活用で輸送時間や在庫を圧縮しコストを削減できると強調した。一問一答は次の通り。

 ―ヤマトHDにとって沖縄の位置付けは。
 「ここ数年で沖縄の役割が高まっている。ヤマトグループのネットワーク上、日本とアジアを結ぶための極めて重要な位置付けになり始めた。単に沖縄のためだけではなく、日本とアジアを結ぶ結節点としてのハブ機能が、アジアの宅急便サービスのレベルを上げるキーファクターだ。アジアへ翌日配達できる仕掛けに沖縄は必須だ」
 「安倍晋三内閣が物流効率化や日本経済再生にアグレッシブな施策を打ち出そうとしており、沖縄の立地環境はさらにプラスアルファの付加価値が付いてくる。アジアへのネットワークをつくり、つないでいくことが、実は日本企業にとって、日本とアジア間や、アジア間での物流効率化に使える。本当に飛躍的に存在感が高まっている」
 ―1月から物流特区内でセンターを稼働させた。具体的な沖縄での展開は。
 「国際クール宅急便を年内にスタートさせたい。これができると日本の農産物の輸出で沖縄がゲートウエー(玄関口)となりとても大事な役割となる。画期的なことだ。直近の狙いは農産物をアジアに翌日配達することで、日本の農産物の国際競争力を付け、攻めの農業に変えようという国策にマッチする事業が展開できる。そのための実験を既に大手通販会社と進めている」
 「それだけでは単に荷物が沖縄を通過するだけ。次のターゲットは沖縄発。知事からも沖縄産品をよろしくと言われ『喜んで』と答えた。本当はその次だ。個人的願望としては、沖縄で新しいものづくりを始めてはどうかというところまで行きたい」
 ―県は通販やリペアセンターなどの展開を描く。
 「緊急パーツの物流だけではなく、本格的に沖縄に雇用を生み出すにはそれで満足してはいけない。製造加工の領域にまで本格的に行けるだけの地政学的な立地はもともとあった。物流インフラがなかったのが今度は整ってくる。産業構造が変わるきっかけになればいい」
 ―注目する企業は多い。
 「沖縄に持って行くのはコストがかかる、直接香港などに送った方がいいのではないかと一般的に思われるかもしれない。しかし現在の在庫管理や通関に伴う手続き、それにかかるコストや時間は全てぶつ切りになっている。それを一気通貫することで、トータルの物流コストが劇的に減る。リードタイム(輸送時間)が短縮できる。納得してもらえる材料をどんどん出していきたい」(聞き手 滝本匠)