サッカー支えに闘病 仲俣君、病乗り越え県総体“出場”


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エースナンバー「10」のユニホームを手に、チームメートと話す仲俣章太郎君(中央)=24日午前、那覇空港(金良孝矢撮影)

 沖縄の高校生アスリートが集う県高校総合体育大会が31日に開幕するのを前に、25日から宮古島で先行開催されるサッカー。誰よりも強い思いを秘めて“出場”する3年生がいる。昨年、急性骨髄性白血病を患い、厳しい闘病生活を乗り越えた県立球陽高校の仲俣章太郎君(17)。「同じ病気と向き合う子たちの励みになりたい」。ピッチには立てないが、ベンチから仲間たちへ熱い声援を送る。

 「サッカーは自分の支え」という仲俣君。小学3年からサッカー漬けの日々を送り、強豪クラブチームに所属した中学時代は、地区選抜にも選ばれた。球陽ではエースストライカーとして活躍。山内康司監督も「ここぞという時に点を取ってくれる頼もしい存在」と信頼を寄せる選手だった。
 体に異変が現れたのは昨年の夏ごろだ。試合後にけいれんを起こし、その後「少しのランニングで何百キロも走ったような疲れ」(仲俣君)や、目の異常などの症状が続き、病院で精密検査を受けることに。検査の結果、白血病と告げられたときは、恐怖心でいっぱいだったという仲俣君。だが、医師から「ちゃんと治療すれば大丈夫」と言われ、すぐに気持ちを切り替えた。見舞いに訪れる友人らには「インターハイ(県総体)には出るから」が口癖に。抗がん剤の副作用からくる激しい頭痛や吐き気にも、弱音を吐かず耐え抜いた。
 ことし3月に末しょう血幹細胞移植手術を受けて順調に回復し、退院も近いという。まだ万全とはいえずプレーの許可は下りなかったが、仮退院という形で母ひろみさんが同伴しての観戦が認められた。
 球陽の3年生にとっては県総体が最後の大会となる。1回戦の豊見城戦は25日。仲俣君は「本音を言えば試合に出たいけど、外から見て分かることもある。できる限りのアドバイスをしたい」と力を込める。MF(ミッドフィルダー)として仲俣君と何度も息の合った連係プレーをしてきた3年の吉田大志朗君(17)は「章太郎のためにも、勝ってみんなで喜び合いたい」。サッカーへの情熱を絆に、少しでも長い夏を誓う。(大城周子)