結核集団感染 昨年6月から症状 発病経緯確定できず


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 「結核は過去の病気ではない」―過去20年間で最多となった那覇市内の小学校で発生した結核の集団感染。那覇市保健所の24日の発表を受け、教育関係者からは一日も早い児童らの健康回復を願うとともに、結核に対する認識不足による風評被害などを懸念する声が上がった。

 那覇市保健所によると、感染ルートについて、最初に発病した児童は2012年6月から症状が出ており、結核の感染から発病の平均期間(約6カ月)を考慮すると、感染時期は11年12月~12年1月ごろとみられる。県の那覇中央保健所(当時)や主治医が本人や家族、親類に詳細な聞き取り調査や検査を実施したが、児童が感染した経緯を確定できなかった。
 児童はせきが続くなどの症状で、12年6月に医療機関を受診。病状の改善や悪化を繰り返した。ことし2月に肺炎で入院し、レントゲンやたんの検査で結核であることが判明した。
 24日の記者会見で、早い時点で結核が判明していれば感染拡大を防げたのではないかとの質問に対し、那覇市保健所の国吉秀樹所長は「子どもの結核はまれで、とても分かりにくい。診断は非常に難しい」と述べた。
 市は児童の発病を受け、家族、親類、同学年の児童を対象に検査を実施したが、他の学年については児童との接触が少ないことから行っていなかった。だが、児童の健康管理に万全を期すため、市は週明けにも全校児童や教職員計659人の検査実施を決めた。23日夜には同校体育館で血液検査などの説明会を開いた。
 那覇市教育委員会の喜瀬乗英学校教育部長は「結核は根絶された病気ではない。認識が不十分なため、子どもたちが他校との交流を制約されるなど、教育活動に影響が出てはいけない」と強調。自身も「結核の感染を服薬で防げることは知らなかった」と語り、病気への正しい理解を訴えた。6月上旬、市内小中学校の管理職らを対象に研修会を開き、結核の正しい知識の共有化を図る方針だ。

◆風邪症状続けば受診を
 沖縄病院呼吸器内科・久場睦夫医師の話 結核の初期症状は微熱や体のだるさ、さらにはせき、たんが出るなど、風邪の症状に似ている。2週間以上続くようなら受診を頭に入れてほしい。結核の診断にはレントゲンやたんの検査、クォンティフェロン検査などがある。菌が出なくても、症状や画像の所見などを総合的に判断して治療に踏み切ることもある。治療は薬の服用がほとんどで、元気な人であれば6カ月飲み続ければ治る。高齢者や合併症の強い人は9カ月から1年くらい服用する。
 結核は患者のせきやくしゃみで空気感染する。感染しても必ず発病するわけではない。感染して発病する確率はおおよそ10%。感染して1年内で発病する人もいれば何十年もかかることもある。
 子どもの結核はBCG接種で減らすことができる。万能ではないが、重症化を防ぐことはできるので受けてほしい。体力を落とさないよう日頃から健康に気を付けてほしい。

県内の新規結核患者数の推移
結核の主な初期症状