基地許容量の限界 米軍F15、漁師頭上で「空中戦」


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<解説>
 米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機の墜落事故は、沖縄における基地の許容量の限界をあらためて示すものと言える。特にF15は2006年にも嘉手納の米軍機が墜落しているほか、11年には航空自衛隊那覇基地所属機が墜落しており、構造的な欠陥も疑わざるを得ない状況がある。

 米軍のF15は1994年に嘉手納弾薬庫内の黙認耕作地に墜落・炎上するなど復帰後、海域を含めて県内周辺で計9回、10機が墜落している。嘉手納に常時配備された1979年から約3・7年に1度の頻度で墜落しており、自衛隊のF15機事故も含めると、さらに頻度は上がる。復帰後の県内での米軍による航空機墜落事故は今回で44件目を数え、年間1回を超える頻度で米軍機は墜落していることになる。
 米軍のF15戦闘機の墜落事故は沖縄本島東海岸に集中しており、82年には今回墜落したとみられるホテル・ホテル訓練区域で2機が空中戦闘訓練中に墜落し、1人が死亡した。
 同訓練区域周辺には漁業関係者が利用する魚礁が点在しているが、その上空では戦時下の空中戦を想定した激しい訓練が繰り広げられており、漁師たちは危険な「基地との共存」を強いられている。今回は墜落した機体とともに数機が嘉手納から離陸しており、戦時下を想定した同様な訓練を目的としていた可能性が高い。
 日米両政府は事故発生のたびに、「人為的ミス」として問題を矮小(わいしょう)化するかのような説明を繰り返すが、事故が多発する状況では県民を納得させることは到底できない。事故原因の調査過程で構造的な欠陥も含めた厳密な調査と結果の公表が求められる。(池田哲平)