県が新たなエネルギー政策として進めている県海洋深層水研究所(久米島町)の海洋温度差発電の実証試験が4月から稼働している。現在、世界でも実際の海域での海洋温度差発電の実証試験は実施されておらず、久米島町の発電施設が先駆けとなる。
海水温度の高い沖縄ならではの新しい再生可能エネルギーの構築が期待される。
発電システムは、表層の温かい海水(表層水)と深層の冷たい海水(深層水)との温度差を電気エネルギーに変換する仕組み。海水の温度差がなければできない発電方法で、県内でも温度差が20度を超える久米島、石垣島、宮古島などの離島に可能性が絞られる。
経済産業省が発表する日本国内のエネルギー自給率(化石燃料と自然エネルギー)は2010年度で約4%。温度差発電施設を管理するゼネシス(東京)の岡村盡課長は「化石燃料はいずれ枯渇する。今のうちから4%という数字を上げる努力をしていかなければいけない」と話す。日本の技術を集め質の高いエネルギーを創出することで、新たな産業や雇用創出を見込む。
海洋エネルギー研究を30年以上続ける佐賀大学の池上康之博士は「太陽光や風力などの自然エネルギーと比較しても海水の温度はある程度一定なので安定して発電できる。久米島の発電施設は世界に向けたショールームになるのではないか」と話した。
施設は最大出力50キロワットのうち、現在10キロワットの発電に成功している。6月からは沖縄電力と系統をつなぎ、自家発電を施設内で使用することが可能になる。
県は16日、実証プラントの通電式を催す。
(阪口彩子)