スマホやネットと融合 県内ラジオ進化中


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 ラジオがインターネットとの融合で変化している。ツイッター(短文投稿サイト)が聴き手(リスナー)との距離を縮め、ポッドキャスト(ネット上で音声などを公開するサービス)が幅広いファン層を獲得している。県内のラジオ事情を追った。

 5月、浦添市にあるFM沖縄の人気番組「ゴールデンアワー」の放送中。パーソナリティーの西向幸三さん(41)と糸数美樹さん(28)の手元にあるパソコン画面には、番組を聴いている人からツイッターでの反応が並ぶ。いくつかは即座に番組で紹介され、リスナーと共に番組が作られる。「生放送のラジオでは、もはやツイッターは必須」と西向さん。
 ツイッターで番組に参加する前浜知味(ともみ)さん(20)=うるま市=は「実況中継のよう。話し手と聴き手が投稿し合い、双方の距離が近づいた。リスナーが番組を広められる道具にもなる」と語る。
 番組イベントには、ネット配信で聴く県外からの参加者も。西向さんは「ラジオは音声だけ。制作費が他のメディアに比べて膨大でない分、話術とアイデア次第で東京にも負けない番組作りが可能だ」と話す。
 沖縄市の地域FM局「オキラジ」の番組「スマートフォン王国」では、電波ではなくネットで聴く人々を初めから想定している。ポッドキャストによる番組配信や、ツイッターなどでの情報発信により、県外・国外からのリスナーを集めている。モバイル製品や業界の話題に特化した番組で、全国の一部リスナーから人気に火が付き、1月には国内のポッドキャストのダウンロード順で総合16位を獲得した。
 パーソナリティーのモバイルプリンスさん(26)は「知りたい情報を自分に合わせて調達できる時代。マニアックな番組だが、その情報を欲しがる人のための番組にしたい」と話す。
 ラジオ沖縄は50年以上の歴史を持つ「方言ニュース」をポッドキャスト配信している。「県外のリスナーがうちなーぐちの教材として聴いているケースもある」と制作報道部長の前川英之さん(53)は語る。高齢者向けのニュース番組として始まった当初の趣旨とは違った形で聴かれている。「地元のことを地元の言葉で伝える。全部方言で進行する番組は沖縄にしかないのでは」と話し、「何でも地域と一緒にやっていくのが、うちの社是でもある『ローカルに徹する』ということ。沖縄の一般の人こそ面白い」と笑う。
 ネットの活用は、受信方法にも変化をもたらしている。「ラジオそのものを触ったことのない若い人が増えている」と話すのは、RBCiラジオ編成業務部の多和田真梨奈さん(42)。1月から、スマートフォンでラジオを聴ける無料アプリ「ラジコ」に参入した。スマートフォンを受信機に変えることで、新規リスナーの獲得を図る。
 「今までラジオを聴かなかった人が、初めてラジオを聴いてワクワクできる入り口になれば」と多和田さんは期待する。
(長浜良起)

机に多くのモバイル端末がある「スマートフォン王国」の放送中。左から玉城靖規さん、石原萌さん、モバイルプリンスさん=5月9日、沖縄市上地のFM局オキラジ
メールとツイッター両方をチェックしつつ、大笑いで番組を進める西向幸三さん(右)と糸数美樹さん=5月27日、浦添市小湾のFM沖縄